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第70期王将戦リーグ特選譜

藤井王位がまさかの大逆転負け 苦手・豊島竜王の「おしん」並みの粘りに屈す

豊島将之竜王との対局前に天井を見上げる藤井聡太王位=大阪市福島区の関西将棋会館で2020年10月5日午前9時51分、山田尚弘撮影

 この夏、棋聖、王位を続けて獲得し、将棋界のトップクラスに上り詰めた藤井聡太王位(18)だが、なぜか豊島将之竜王(30)には分が悪い。9月12日に行われたJT杯将棋日本シリーズ2回戦で敗れて通算5戦全敗。ほとんどの棋士に勝ち越し、負け越してもわずかという中で、5連敗とは……。豊島が現代将棋界を代表する存在の一人であることを考慮しても意外な対戦成績だ。それから約1カ月で雪辱の機会がやってきた。【山村英樹】=▲が先手、△が後手

 王将戦リーグ1回戦で藤井は羽生善治九段に負け、豊島は木村一基九段に勝利と明暗を分けた。7人が参加する王将戦リーグでは、1敗を保てば挑戦争いに加わるが、2敗を喫すると単独挑戦は難しくなる。しかもプレーオフは順位上位2人との規定により、藤井は3位のため3敗した瞬間に(全員が3勝3敗の場合でも)挑戦の可能性がなくなる。2戦目にして挑戦に関しては大一番を迎えたことになる。2位の豊島は比較的ゆとりがあるが、星取りに関係がなくてもこの一戦の重要さは受け止めているはず。注目を集めた対局になった。

 前期の王将戦リーグは豊島1勝1敗、藤井1勝で対戦し、豊島が粘り強い指し回しで171手で勝利した。豊島にとって、竜王戦七番勝負の開幕直前であることも前期と同じ。そして先手の豊島が相掛かりを志向し、藤井が受けて立ったのも同じ。そして……同じ手数で終局した。

<第70期大阪王将杯王将戦リーグ2回戦>

2020年10月5日

持ち時間各4時間

場所・関西将棋会館

▲豊島将之竜王(1勝)

△藤井聡太王位(1敗)

▲2六歩  △8四歩  ▲2五歩  △8五歩

▲7八金  △3二金  ▲3八銀  △7二銀

▲6八玉  △1四歩1 ▲7六歩  △8六歩

▲同 歩  △同 飛  ▲3六歩  △7六飛6

▲7七角  △7四飛1 ▲8八銀  △8四飛

▲3七桂  △5二玉5 ▲4六歩  △3四歩8

▲2四歩1 △同 歩  ▲同 飛  △2三歩

▲2五飛  △9四歩17 ▲4八金6 △9五歩46

▲4七銀2 △8六歩5 ▲8五歩76 △7七角成31

▲同 金  △3三桂  ▲2九飛  △8五飛

▲3五歩1 △8四飛12 ▲6六角23 △7四飛5

▲8六金36 △3五歩8(第1図)

 以前は後手番の勝率が低い(といっても高勝率だが)と言われた藤井だが、今年度は半年間、後手番で負けていない。藤井は後手番では基本的に相手の臨む戦型に追随するので、逆に言えばどんな戦型でも指しこなす自信があるとも言える。前期、相掛かりで敗れたのはもちろん知っていて、今回は打ち負かそうという気合。前期は藤井が△7四飛からタテ歩取りの格好で先手の7六歩を狙ったが、豊島が▲7七金と上がって歩損を拒否した。今期は横歩取りの要領で藤井が臨み、豊島は歩を取らせた。この分、手得を生かして主導権を握ろうとするのが豊島の作戦だったと思われる。その証拠に昼食休憩前、▲4七銀まではわずか9分しか使っていない。

 だが、藤井に△8六歩と垂らされて豊島の手が止まった。局後の検討では本譜の▲8五歩に代えて▲6六歩と角筋を止め、△7四歩に▲8七歩と合わせる手も検討されたが、本譜との比較は難しい。▲8五歩に対して、藤井は角交換から飛を追い、歩を取って再び△8四飛と好位置に戻した。飛交換は後手陣の方が打ち込みに強く、後手が歓迎という理由がある。そして、この飛がこれから横に動き、藤井がポイントを重ねていくことになる。

 第1図以下の指し手

▲4五桂  △2二銀16 ▲3三桂成4 △同 銀

▲7七桂  △8五歩23 ▲同 金31  △2四飛5

▲2五歩7 △3四飛  ▲2六桂2  △6四飛21

▲7六歩  △6六飛4 ▲同 歩   △3六歩

▲同 銀18 △9六歩6 ▲同 歩4  △9八歩

▲8三歩  △同 銀  ▲6五桂8  △9九歩成

▲2一飛  △3一歩2 ▲1一飛成2 △8九角7

▲5六香3 △4一桂  ▲1二竜10(第2図)

 第1図を眺めると、後手が動かした玉、金、銀、桂の手数は計4手。対して先手は金が四段目に進むなど、圧倒的に動かしている。しかし、先手陣はまとまりがなく、形勢は「藤井持ち」と将棋プレミアムで解説を務めた豊川孝弘七段。「桂を取れば、△7六桂の王手銀取りがある。激しく動いたわけではないが、後手がうまくまとめていると言える」と藤井の指し回しをたたえた。

 豊島もこのまま追いつめられるわけにはいかないが、「桂を取れば……」と解説されたところで、▲4五桂と桂交換を挑んだのは非常手段的な手。他の攻め筋としては▲8三歩と垂らす手があるが、本譜で豊島が着手したのはだいぶ先になる。▲7七桂も非常手段的だが、藤井は△7六桂以上の指し手とも言える△8五歩で打診した。豊島は「▲7五金で勝負するのだった」。以下△3四飛▲4五桂△4四銀▲6五桂と進めば、本譜より勝負形だったかもしれない。

 豊島が選んだのは▲2六桂で飛を追い、▲7六歩と桂頭を補って劣勢ながらも長期戦を目指す指し方だった。将棋プレミアムのもう一人の解説者、深浦康市九段は「豊島さんにしては珍しい辛抱だが、後手優…

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山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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