台風19号1年--東北大・柴山准教授に聞く 早期避難、いかに促すかが鍵 /宮城

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柴山明寛准教授=宮城県丸森町役場で2020年6月19日、神内亜実撮影
柴山明寛准教授=宮城県丸森町役場で2020年6月19日、神内亜実撮影

事前準備、行動計画、知識学び被害最小に

 記録的な豪雨で甚大な被害をもたらした昨年の台風19号の上陸から12日で1年。関連死を含め12人の死者・行方不明者を出した丸森町で、防災体制の改善について検討した検証委員会の委員長を務めた柴山明寛さん(東北大災害科学国際研究所准教授)に、町の災害対応への評価や豪雨災害の教訓などを聞いた。【聞き手・神内亜実】

 ――検証委は6月に16項目の提言書を町に提出し、現在、地域防災計画の見直しが進められています。

 ◆検証を通じて浮かんだ一番の課題は、町が早期の避難を町民に促せなかったことです。山がちで広大な面積を持つ丸森町では避難所への移動も時間を要します。町は気象庁の発表を待たず、もっと早い段階で避難を呼びかけるべきでした。

台風19号による大雨で冠水した宮城県丸森町庁舎(左奥)周辺の様子=同町で2019年10月13日、藤田花撮影 拡大
台風19号による大雨で冠水した宮城県丸森町庁舎(左奥)周辺の様子=同町で2019年10月13日、藤田花撮影

 ――今後どのような基準で避難を促すべきでしょうか。

 ◆従来の町内一斉の警戒レベル発令を見直し、地形や災害リスクが異なる地区ごとに新たな基準を設けます。町内の8地区を山側と平野部に分け、地域防災計画では11カ所で運用する予定です。

 山側は土砂崩れの危険が高いので早期避難を促すのはもちろんですが、平野部の住民に危機感を持ってもらうことも狙いです。町内全域の発令では「山側が危ないのだろう」と過信し、避難が遅れるケースがあります。しかし、人口が多い平野部ほど避難にも時間がかかります。

 ――地区ごとの警戒レベル発令は一般的なのでしょうか。

 ◆まだ一般的とは言えません。仙台市では町レベルで避難情報を提供していますが、そうした細かな情報を出しているのは、全国でも政令市の一部だけです。自治体で独自に判断できるだけの観測機器があるかなども影響します。丸森町の場合は1級河川があり、雨量計や水位計が充実しています。

 どの自治体も早く避難した方が良いと分かっていても、地域によって危険度が異なれば一斉に避難勧告を出すか判断に悩みます。同一の基準で運用すべきでないと思います。

 ――浸水想定によっては、建物上層階への「垂直避難」も選択肢になると思います。

 ◆垂直避難ができる場合とそうでない場合があります。丸森町では「垂直避難をしないで」と呼びかけています。土砂崩れや浸水被害を免れる場所が少なく、点在している垂直避難が可能な建物を個別に指定しなくてはならないからです。それでは、いざという時に混乱を招きます。都市部では垂直避難が可能な建物も多いので、事前にハザードマップで確認してください。

 ただ、感染症のリスクなども考えると、避難所の数を増やす必要があることに変わりはありません。自治体の外に設置するのも一つの方法でしょう。丸森町の舘矢間地区では、隣接する山元町に新たに「広域避難所」を設け、今後は車で移動する訓練を行います。

 ――各地で豪雨災害が相次ぐ中、今後に生かせる台風19号の教訓は何でしょうか。

 ◆台風は上陸の数日前から進路を予測でき、事前に準備ができる災害です。時系列に沿った防災行動計画「タイムライン」を独自に定めれば、被害を最小限に食い止めることができるはずです。

 市民には、自分が住む地域の災害リスクを理解し、防災知識を身につけてほしい。1986年にも丸森町を大豪雨が襲いましたが、台風19号では「過去の豪雨を上回ることはない」と過信し、逃げ遅れた住民もいる。災害は常に予測を超える可能性があることを忘れず、自分の身を守ってほしいです。

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