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関西弁の盲導犬CMに賛否 「犬の気持ち分かるの?」SNSでの疑問を取材

「世間の誤解にほえさせてもらいますわ」と訴える日本盲導犬協会のテレビCMの一コマ=ACジャパン提供

 「世間の誤解に、ほえさせてもらいますわ」。信号待ちの犬が突如、関西弁で話し始める。7月にスタートした日本盲導犬協会のテレビCMの一コマだ。盲導犬へのネガティブなイメージに対して、自らが思いを語るユニークな設定で話題を呼ぶ一方、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでは「犬の気持ちが分かるの?」と疑問の声も上がる。その疑問に答えたい。【村上正】

盲導犬「うちら一緒におんのが幸せ」

 盲導犬の声の主は京都府出身の俳優、佐々木蔵之介さん。視覚障害者とともに交差点で信号待ちをしている際、周囲から「盲導犬って大変そうだよね」「ストレス多そう」「かわいそう」と、ささやく声が聞こえてくる。

 それに気づいた盲導犬がふっと振り向き、「うちら、いつでも一緒におんのが幸せや思てんのに。そんなん言われたら、相方も悲しむわ」と一蹴。最後は、「どうか、そんな目で見んといてえや。ほんまに、お願いしますわ。ほな、行こか」と立ち去る。

 CMはACジャパンの支援キャンペーンとして製作された。日本盲導犬協会は、「かわいそう」など盲導犬に同情するような何気ない言葉が長年にわたり視覚障害者を傷つけてきたとして、CMでは親近感を持ちながら互いの関係を正しく理解してもらおうと犬自身が語りかけるスタイルを採用した。山口義之専務理事は「社会からの関心が高い犬が問題提起することで社会にインパクトを残せると考えた」と説明する。

 日本盲導犬協会は「誤解」が生じる背景に、視覚障害者は十分に盲導犬をケアできないのではという疑念が根強く残っていることを一因に挙げる。

 協会が2018年に実施した盲導犬へのイメージを尋ねた一般アンケート(310人が回答)で、「犬の日常的な世話を視覚障害者が1人でできると思うか」について、「我慢させずに排せつの機会を与える」で71%、「適切な量の餌を与える」には53%が、ともに「できない」と回答した。実際には視覚障害者は4週間にわたってパートナーとなる犬とトレーニングを積む。歩行だけではなく、餌やりや排せつといった犬の世話の仕方など、共同生活に向けて信頼関係を構築している。協会は「(こういった過程への)理解が足りず、『盲導犬は自由がなくかわいそう』というイメージにつながっている可能性がある」と分析し、正確な情報発信を課題としている。

東京五輪・パラリンピックに向け実態調査

 さらに盲導犬への理解を巡って関係者の頭を悩ませているのが施設や店舗への相次ぐ受け入れ拒否の問題だ。東京オリンピック・パラリンピックでは国内外から盲導犬ユーザーの視覚障害者が競技会場やその周辺を訪れることを想定し、政府や関係団体は盲導犬の活動状況や実態を調査してきた。

 02年に施行された身体障害者補助犬法は、補助犬を伴う使用者を公共施設や飲食店などで受け入れることを義務づけている。だが、全国盲導犬施設連合会が3月に公表した初の全国調査では盲導犬ユーザー643人のうち約半数が「19年の1年間に受け入れ拒否を経験した」と回答した。

 拒否に遭った場所(複数回答)は、飲食店で77%、病院が25%、電車、バスなど交通機関が21%だった。拒否の理由(同)は「動物や犬はダメ」が62%で最も多く、「犬アレルギーや犬嫌いの利用客に迷惑がかかる」が46%で、特に都市部で多かったという。

 視覚障害者への理解が進まない中で、日本盲導犬協会は14年から計4回、ACジャパンの協力の下で盲導犬への理解を求めるテレビCMを製作し、放映してきた。盲導犬と暮らすことで視覚障害者の世界が広がっていく姿などを描いてきたが、山口専務理事は「良いイメージだけではインパクトは残せなかった」と、思いのほか反響は少なかったという。

 今年は「世間の誤解を解く」をテーマに全国の広告会社から58案が集まり、犬を主人公に自らの口で偏見解消をアピールした作品を採用した。テレビCMだけでなく、全国の駅で掲示されるポスターなども作製し、狙い通り過去に比べ反響は大きい。

 協会に届いた電話やメールは、前回作品の1年間で150件ほどだったが、今回は3カ月で約120件が寄せられた。賛同する意見が多くを占める一方で、約40件は「犬の意見がどうして分かるのか」と疑問視する内容だった。さらにSNSでは「街で見かける盲導犬は悲しげだ」「人間による決めつけではないのか」という投稿も目立ち、「誤解」が根強く残っている現状が改めて浮き彫りとなった。

「人間の決めつけでは」批判に専門家の答えは

 果たして盲導犬は本当に人間との生活を幸せに感じているのだろうか?

 「直接的な根拠はないが、その証明を補強するのに役立つ証…

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残り830文字(全文2749文字)

村上正

毎日新聞東京本社運動部。1984年、神戸市生まれ。2007年入社。舞鶴支局、神戸支局を経て、大阪本社社会部では大阪府警を担当。17年4月から現職。競技は水泳やサーフィンを担当。東京パラリンピックでは取材班キャップ。16年リオデジャネイロ五輪を取材した感動から、長女に「リオ」と命名した。

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