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的川博士の銀河教室

的川博士の銀河教室 617 火星の氷の下にいくつもの塩水湖?

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高まる生命への期待

 地球の南極には日本の「昭和基地」がありますね。ロシアの南極基地は「ボストーク基地」といいます。その数百メートル地下には「氷底湖」といって、厚い氷の下に湖のあることが分かっていて、「ボストーク湖」と命名されています(図1)。

 この「ボストーク湖」と同じような「氷底湖」が、火星の南極(図2)の地下にいくつも存在する可能性があるらしい――そんな調査結果がイタリアの宇宙物理学研究所のチームによって発表されました。欧州(おうしゅう)の火星探査機「マーズ・エクスプレス」(図3)のデータを分析(ぶんせき)してもたらされた発見です。

 たとえば図4は、「マーズ・エクスプレス」搭載(とうさい)のレーダーを使って火星の南極を観測した結果を整理したもの。液体の水がある領域が青色です。この図からは、直径約30キロの大きな湖の周囲に少なくとも三つの小さな湖が存在することが見てとれますね。その小さな湖には、一つあたり液体の水が100億リットル以上あると報告されています。

 火星は私たちの住む地球に比べると温度が低くて、南極の表面温度はマイナス100度よりかなり低温です。地下はそれよりは高温でしょうが、それでも普通(ふつう)の真水だと凍(こお)っているはずです。それが「液体」の状態になっているということは、つまり塩分濃度(えんぶんのうど)がかなり高いということになるでしょう。

 水に食塩を混ぜると、0度では凍らなくなります。この火星の水もそのような状態になっていると思われます。しかし、それではちょっと困ったと考えている科学者もいます。火星には生命がいるかどうかを調べたい科学者たちです。

 私たちのいる地球の海も塩辛(から)い塩水です。いろいろと実験をしてみると、その地球の海の5倍くらいの塩分濃度なら、生き物は何とか生きていけそうですが、それ以上になると生命維持(せいめいいじ)は厳しくなります。そして海水の20倍くらいの濃(こ)さになると、もう生命は存在できません。火星には地球生命の兄弟姉妹みたいな「いのち」がいるかもしれないと期待しているのに、これは困ったものだなあと、感じているのです。

 でもまあ、この論文の主張している氷底湖の存在も、これからもっとデータを集めて、本当に確かであることをしっかり実証する必要があります。生命の存在の可能性に期待しつつ、これからの探査を楽しみにしていましょう。みなさんも将来、そんなプロジェクトに参加するといいですね。


的川泰宣(まとがわ・やすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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