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内田麻理香・評 『ポストトゥルース』=リー・マッキンタイア著、大橋完太郎・監訳

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『ポストトゥルース』
『ポストトゥルース』

 (人文書院・2640円)

真実が政治に屈する時代に

 二〇一六年の米国の大統領選挙では、虚偽を並べ立てるトランプが選ばれた。真実を軽んじる指導者が生まれ、支持される状況はポストトゥルースと呼ばれる。本書は、この現象の正体を見極め、それと対決する方策を探る。

 ポストトゥルースとは、政治的利益を優先させるために「真実」を軽視することを指す。一六年前後に注目を集めるようになった概念だが、その芽は長い時間をかけて育まれてきたという。著者は、指導者だけではなく、私たちの中にもポストトゥルースは存在しているという。

 ポストトゥルースの背景には、「科学の否定」がある。気候変動についての見解は、科学者間では同意が得られているが、トランプをはじめ、気候変動否定論者は多い。解決済みの科学の問題に、混乱と疑いを生み出す戦略は、一九五〇年代に始められた。タバコ会社が専門家に資金提供し、会社に都合の良い研究成果が出された。歪(ゆが)められた「科学」の成果は、ほぼ確定した科学に対しても、非専門家に「論争中の科学だ」と見せか…

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