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本村凌二・評 『アウグストゥス 虚像と実像』=バーバラ・レヴィック著、マクリン富佐・訳

『アウグストゥス 虚像と実像』

 (法政大学出版局・6930円)

 世に英雄とよばれる定番は、アレクサンダー大王、カエサル、ジンギスカン、ナポレオンなどである。なぜだか、ローマ帝国の創設者アウグストゥス帝は念頭に浮かばない方々が多い。暗殺された大伯父カエサルの遺言で、オクタウィアヌスは19歳の若さで養子相続者に指名された。そのせいか、大軍を率いて先陣を切る勇将というイメージが薄いからだろう。

 前6世紀末に共和政を実現したローマ人の社会には、500年もの長きにわたって独裁者を忌み嫌う雰囲気が根強かった。カエサルでも共和政国家を倒すなどと表立って言えるわけではなかった。だが、終身の独裁官になったことが疑惑を深め、前44年3月15日に共和派の刃(やいば)に倒れる。カエサルには腹心の部下マルクス・アントニウスがいたので、共和派排除後、オクタウィアヌス派とアントニウス派の内乱がつづいた。その十…

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