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--5年前の住民投票で否決された「大阪都構想」。再び賛否が問われることをどう考えるか。
2015年5月の民意は、直接民主主義で示された。大阪市の廃止には反対だという政策に対する主権者、大阪市民の判断だ。その時点が一番判断されるべきだ。安倍晋三首相(当時)も2年前に大阪で「15年、20年は普通はできないよね」と話していた。感覚的にも私も同じ。状況が大きく変わっていない中で有権者の判断を尊重するべきだと思う。本来、民主主義は議員がしっかりと少数意見も含めて議論を交わし、合意形成をはかる努力をしないといけない。だが15年以降はそれをせずにずっと対立が続いた。この政治手法は民主主義にとっても地方自治にとっても危ないやり方だ。
--その後も都構想を公約として掲げ、選挙に勝って民意を得たから2度目をやるという。都構想のメリット、デメリットをどう考えるか。
法律的には可能だが、勝つまでジャンケンとしか見えない。何のためか、市民のためか。大阪維新の会の政治的勢力拡大のためのメッセージに思える。本来そういう政治をやってはいけない。
昨年の統一地方選で我々は大きな負けを喫し、是々非々で議論に臨んだが、メリットと言えるものはなかった、というのが正直なところだ。大都市(地域特別区設置)法の制定のときに「政令市が格下げになって住民に大きな影響を与えるから、住民投票をやるのだ」という議論があった。個々の課題をしっかりと伝えるべきで、12年に法律ができた後の地方制度調査会において東大の行政学の先生が(特別区は)「いばらの道」と言われた。地方交付税制度上、明らかに政令市の大阪市のままでいた方がいい。自治体運営のベースになり、地方交付税交付金の基にもなる基準財政需要額で、財政が保障されるのに、特別区へは、府と市分の合算方式。特別区は独立しても基準財政需要額が算出されず、保障もされない。行政サービスが成り立つのかと指摘されている。
「おおざっぱに四つに割るだけだからできる」といつも乱暴な説明がなされるが、制度的に予算が組めるかどうか、法律ができた議論やその後の地方制度調査会での議論を踏まえると、課題が大きいことが分かる。一番の課題は、財政の問題だ。ここをきっちり議論したかったが、全く答えをもらえていない。
基準財政需要額をどう算定するのか、モデル区や標準区を設定し、計算式を出してほしい、そうでなかったら成り立つか検証できないと言い続けているが、「できないのは改革する気がないからだ」という根性論のような回答ばかり。この課題を市民に伝えられなかった。残念だ。
独自の行政サービス維持は、かなり難しくなる。財政的な裏付けがしっかりと保障されていない。特に基準財政需要額を、本来、一つの自治体として計算したら、数字が保障されていない。それと独自の財源が非常に少ない。大阪市の税収(15年度決算)は6600億円。それが特別区になると、4特別区を足しても1700億円。固定資産税や法人市民税などは大阪府の税収になるので、いきなり、4分の1になる。独自の税収が4分の1になり、後はほとんどが府からもらう形。国からの交付税も直接入らず、府経由なので基本的に府に依存する。お小遣い制になる。自分で稼いだ分を渡し、そこから小遣いをもらう。財政的に厳しさがある。
--15年は1万票差の僅差。どう分析するか。今回はどうか。
最終的に反対が上回ったのは、市民の一人一人の動きや思いがあったから。市民の皆さんがファクトチェックをご自身でされた。直接民主主義では、自分で判断するのは自分の責任だ、という意識が芽生えた。情報リテラシーが上がり、政治リテラシーは上がる。大阪市がなくなれば二度と戻らない、住民投票になぜ法的拘束力があるのかを理解され、良識が示された。住民投票は、自分たちで考えて投票していただければいいが、政党を選ぶ選挙と勘違いしたり、政治家を選ぶ選挙と勘違いされたりするリスクが非常に高い。本来はそれで動いてはいけない問題。我々は情報を正しく伝える責任があり、市民が冷静に情報にアクセスできる環境を作らないといけない。人気投票になりかねない状況だ。
--維新が都構想をやる理由は「二重行政の解消」。大学や研究所の統合は進み、話し合いで解決できている部分も多いが、制度として担保しないと府市の連携はできないか。
日本の自治制度を行政学的にみると、自治体は総合的に行政サービスを担う。自治体にお金さえあれば、大概のことはできる。特別区の首長が「病院を建てる」といって選挙に出て勝ったら病院を建設できる。必要な病院を必要な分だけ造って、それが二重行政だと言えるのか。大きな勘違いがある。廃止された住吉市民病院でも、廃止のコストがかかり、PCR検査をしている…
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