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社説

ノーベル文学賞 多様な価値発見の契機に

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 ノーベル文学賞が米国の詩人、ルイーズ・グリュックさんに授与されることが決まった。女性としては一昨年のオルガ・トカルチュクさんに続く16人目となる。

 グリュックさんは、人間の痛みや死、子ども時代の日常、家族との生活などをテーマにしてきた。1993年にはピュリツァー賞を受賞している。

 「厳粛な美しさを伴った、まごうことなき詩的な声によって、個の存在を普遍的なものにした」というのが授賞理由だ。

 文学賞の選考主体であるスウェーデン・アカデミーは一昨年、メンバーの夫の性的暴行疑惑が浮上するなどスキャンダルに見舞われ、発表を見送った。

 昨年の受賞者発表前には、信頼回復をめざし、欧州中心主義や男性優位を改めるとの考えを示していた。

 しかし、2年分の受賞者は2人とも欧州からだった。第1回から通算して、女性の受賞者もまだ全体の1割ほどでしかない。

 今年は欧州以外で、かつ女性だった。男性優位の傾向が変わる兆しであることを期待したい。

 受賞者の使用言語も英仏独が全体の半数を占める。だが、世界には多言語を操り、異文化のはざまを生きるユニークな作家も多い。

 スウェーデン・アカデミーには、これまで以上に多様な作家に光を当ててほしい。

 新型コロナウイルスの感染拡大は、当たり前だった日常を奪っただけでなく、分断や格差といった社会のひずみをあぶり出した。

 日常生活の中で人間が体験できることは限られている。けれども、小説や詩を通して、文化の異なる人々の置かれた状況や生きざま、価値観に触れることが、新たな視点を与えてくれる。

 文学の力は、きしむ世界の中で他者を理解するための潤滑油にもなるはずだ。

 国内では毎年、日本の作家が受賞するかどうかが注目されがちだ。しかし、文学賞は世界文学の持つ魅力に目を開かせてくれるきっかけになる。

 コロナ禍で物理的な移動は制限されているが、物語を通して想像の翼を広げることができる。

 多様な声に耳を傾ける機会にもしたい。

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