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恋ふらむ鳥は

/123 澤田瞳子 画 村田涼平

 額田(ぬかた)が怪訝(けげん)に思う暇もあればこそ、蔵の陰からゆったりと歩み出てきた人影が、「おや、これは額田さま」と足を止めた。先ほどの笑い声の名残らしく、唇の両端を引き上げ、両の眼をわずかに細めた知尊(ちそん)であった。

 その片手には小ぶりの木簡が握られ、墨で何事か書き付けられているのが見える。額田の眼差(まなざ)しに気づいたのか、知尊は落ち着き払った仕草で、それを衲衣(のうえ)の袖に納めた。一瞬、考え込むように宙に双眸(そうぼう)を据えてから、青々とした禿頭(とくとう)を軽く下げた。

「これはとんだお耳汚しをしてしまいました。仮にも出家が、あのように大声で笑うなぞ。ただ、あまりに面白い簡(ふみ)が届いたのですよ。人がおらぬと思うて、それでついつい腹の底から笑ってしまいました」

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