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社説

学術会議の行革論議 意図的な問題すり替えだ

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 日本学術会議を行政改革の対象と位置づけ、あり方を見直す論議を政府や自民党が提起している。会員候補のうち6人を菅義偉首相が任命しなかった問題をすり替えようとするものだ。

 首相は年間約10億円の国費が投じられているので会議のあり方を検証するのは当然だと主張する。

 しかし、予算の約4割は事務局職員50人の人件費だ。会員には、総会や分科会の際に旅費・交通費の実費と日額2万円弱の手当が支払われるが、固定給はない。

 自民党の下村博文政調会長は、会議からの答申が近年なく、「活動が見えない」と批判する。だが、答申を出していないのは政府の諮問がないからだ。政策提言は今年だけで68件出している。

 インターネット上では、学術会議が中国による科学者招請事業「千人計画」を通して中国の軍事研究に協力しているという言説も流れている。

 自民党の甘利明税調会長のブログが発端だ。学術会議が千人計画に「積極的に協力している」と記した。甘利氏は「間接的に協力しているように映ります」と修正したが、修正前の情報を基にした学術会議批判が拡散している。

 任命拒否への批判をかわし、学術会議に圧力をかける姑息(こそく)なやり方だ。呼応するように、政界以外からも事実に基づかない批判や「印象操作」とも受け取れる発言が相次いでいる。

 民放の解説委員は「会員OBは死ぬまで250万円の年金をもらえる」と発言し、橋下徹元大阪府知事は米国や英国の学術団体には「税金は投入されていない」とツイッターに投稿した。

 いずれも間違いだが、発信力のある人物の発言だけに見過ごすことはできない。誤った情報を基に、学者をおとしめるような風潮が広がることは避けねばならない。

 問われるべきなのは、首相が6人を任命しなかった判断だ。

 加藤勝信官房長官は、人事の起案は事務方に任せていたと説明した。杉田和博官房副長官が関与したとされるが、6人が除外された理由は依然はっきりしない。

 なぜ外したのか。手続きは適正だったのか。この問いに答えることなく、政府が学術会議の行革論議を持ち出すのは筋違いだ。

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