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論の周辺

「軽く」書かれた重い紛争体験

加藤典洋「オレの東大物語」集英社

 「最近、いい本ない?」とは、気の置けない友人と交わす日常的なあいさつだ。「いい本」とは何だろう。面白い物語、斬新なテーマ、緻密な論証……いろんな場合があるだろうが、共通するのは「誰が読んでも、何かしら自分に引っかかりがある、関わりがあると思わせる」というのがポイントではないだろうか。

 この定義でいくと、加藤典洋著『オレの東大物語 1966~1972』(集英社)はドンピシャリである。「え、大学? それも東大でしょ。関係ないよ」と感じる人も多いかもしれないが、さにあらず。『敗戦後論』を書いた文芸評論家で、2019年5月に死去した著者は、確かに秀才だろうけれど、ずいぶん不器用に生きた人でもある。

 タイトルにあるように大学に6年いたのは学園紛争世代によくあることだが、その後も決まった道を一直線に、とはいかない。つまり、この世代に特有の体験でありつつ、悩み多き青春物語でもある。これなら万人共通だ。

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