メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

EU離脱の英政府法案にスコットランドなども批判 自治権奪われるとの懸念

ウェールズの「首都」カーディフの目抜き通り。赤い竜を描いたウェールズの旗が目立つ=2020年10月13日、服部正法撮影

[PR]

 欧州連合(EU)と結んだ離脱協定の一部を一方的に変更できるとする英政府の法案について、「国際法違反」と反発を強めるEUに加え、英国内のスコットランドやウェールズからも、批判が高まっている。法案は国内の地域ごとの市場の垣根を取り払う内容で、連合王国を形成するこれらの「国々」にとって、中央政府に自治権を奪われるとの懸念があるからだ。

 「民主主義への攻撃であり、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの人々への侮辱だ」。ウェールズ自治政府のマイルズ法務長官は9月、法案制定を目指す英中央政府を非難した。

ウェールズ自治政府の建物。入り口の表示は英語とウェールズ語で表記され、ウェールズの象徴の竜も描かれる=ウェールズ南部カーディフで2020年10月13日、服部正法撮影

 英国では、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各自治政府が食品安全基準や環境・衛生基準などを独自に設定している。だが法案は、英国内で地域ごとの市場の垣根を取り払うことを目的としており、実現すれば、ある地域に輸入されたり流通したりした物は、別の地域でも基本的に流通・販売が可能になる。

 EUは、英国との交渉の末EU離脱協定で定めた北アイルランドとグレートブリテン島との間の通関業務や国家補助金のあり方が英国側に都合がいいよう一方的に変更されるとして反発しているが、英国内各地域でも、自治権がないがしろにされることへの懸念が広がっている。

 同法案に対して、スコットランド自治政府のスタージョン首相は「英政府は国際法違反だけでなく、(各地方への)権限委譲にも反しようとしているのは明白」と批判。ウェールズでは英国の統一を重視するウェールズ保守党の幹部からも反対の声が上がった。

 反対を表明し党役職(ウェールズ議会野党「影の内閣」の法務長官)を辞任したデービッド・メルディング議員は毎日新聞の取材に対し、国際法違反で「同意できない法案を『影の法務長官』として擁護できない」と辞任理由を語ったうえで、「法案が提示しているのは事実上の中央集権化の動きだ」と指摘。これまでの権限委譲の流れに逆行しているとの見方を示した。そのうえで、「連合王国を長期にわたって生き残らせるためには、連邦国家化すべきだ」との持論を披歴し、英国の分裂を防ぐには、中央集権化ではなく、大きな統治権限を各地域に保障する連邦制が望ましいとの見解を表明した。

 同法案は英下院が9月29日、英政府が離脱協定に変更を加える際に英下院の承認を得るとする修正を加えた形で賛成多数で可決。現在上院で審議している。反発を強めたEUは10月1日に法的手続きに基づく通知書を英側に送付し、1カ月以内の返答を求めた。今後は英側の対応を受け、EU司法裁判所に提訴するかなどを決めるとみられている。【カーディフ(英ウェールズ南部)で服部正法】

英連合王国

 英国は、人口の8割以上を占めるイングランドに、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドを加えた四つの地域で連合王国を形成する。各地域はロンドンの英議会が定めた法に基づき、英政府による統治を受けてきたが、各地域の民族主義者らの間には長年、英国からの独立や広範な自治を求める声が一定程度ある。スコットランドなどへの権限委譲を公約にした労働党が1997年の総選挙で勝利すると、誕生したブレア政権下で、スコットランドとウェールズは住民投票を経て99年にそれぞれ議会を創設し、以後、自治権拡大が進んだ。北アイルランドでは、98年の北アイルランド紛争終結を受け、停止していた議会に代わる新議会が設置され、自治が復活した。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 複数選手が脱水症状 プリンセス駅伝でアクシデントが相次ぐ理由とは

  2. 83年国会答弁、内閣府「維持か答えるの困難」強弁 野党ヒアリング詳報

  3. バックアップ、5年「OFF」 富士通のマニュアルに誤り 東証システム障害

  4. FX投資詐欺の疑い7人逮捕 700人から計2億円超だまし取ったか 大阪

  5. 「政府が記録残すのは当然」新書版で削除 菅首相の著書「政治家の覚悟」

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです