犀川のほとりで ある休日=室生洲々子 /石川

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犀川の河川敷を走るランナー=金沢市で、山中宏之撮影
犀川の河川敷を走るランナー=金沢市で、山中宏之撮影

 初秋の、ある日のこと。

 朝、ごみを捨てるために玄関の戸を開けると、隣室のドアの前に蜻蛉(とんぼ)がいた。動かないので死んでいるのかと思い、可哀そうだがごみ袋に入れようとつまんだら、バサバサとか細い翅音(はおと)が聞こえ、思わず落としてしまった。動かないので目を凝らしたが、瀕死の状態なのか少し弱っているだけなのかまでは、わからない。

 蜻蛉は、夏の水辺で産卵したあと、種のさだめに従い命を終えるというから、空気の悪い踊り場に置いておくのは忍びない。もう一度翅をつまんで、出入り口の植木の縁にそっと置いた。ごみを捨ててから、また触ってみたが、先ほどのように簡単には捕まえられない。まるで猫の爪が引っ掛かって取れないのと同じように。どうやら植木のふちのコンクリートに、しっかりとつかまっているらしい。飛びやすいように、外側へ向けて置くほう…

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