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国立大への「弔意」通知 時代にそぐわない対応だ

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 あす行われる中曽根康弘元首相の内閣・自民党の合同葬に合わせ、文部科学省が全国の国立大学などに弔意を表明するよう求める通知を出した。

 それに先立ち、政府は各府省が弔旗の掲揚や黙とうを行うことを決め、関係機関も同調するよう協力を促した。通知はこれを受けたものだ。

 2000年の小渕恵三、04年の鈴木善幸、06年の橋本龍太郎の各元首相の合同葬でも同様の通知が出された。文科省の対応は前例を踏襲したものだ。

 ところが、受け取る側の大学教員らから「政府や自民党の指示に従えということか」などと強い反発の声が上がっている。

 背景には、大学を巡る状況が厳しさを増している事情がある。

 04年度の法人化以降、国立大学への運営費交付金は年々減らされ、15年度までに総額1470億円が減額された。

 国が各大学に交付金の一定割合を拠出させ、教育研究の成果などを評価したうえで再配分する制度も導入された。大学側は国の意向に気を使わざるを得ない。

 そんな中で、菅義偉首相が日本学術会議の新会員候補6人を任命しなかった問題が起きた。

 加藤勝信官房長官はきのうの記者会見で、弔意表明は関係機関が自主的に判断するもので、強制ではないと強調した。だが、大学側がそう受け取るとは限らない。

 通知には、明治天皇の葬儀での弔旗の揚げ方を示す図入りの文書も添えられていたという。

 政府は、今の時代状況への目配りが欠けていたのではないか。そもそも弔意とは、個人が自分の意思で表すものでもある。

 橋本氏の合同葬までは、都道府県の教育委員会にも弔意の表明を求めていた。今回、教委への通知は「参考情報」にとどめた。

 学校現場や子どもたちに黙とうなどを求める趣旨と受け取られないための配慮だという。

 教育基本法は全ての学校の政治的中立性や、大学の自主性の尊重を定めている。大学の自治が損なわれてはならず、国立であっても他の公的機関とは性格が異なる。

 こうした通知が政府の指示と解される心配がある以上、国立大学に送る慣例は見直すべきだ。

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