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ルーツは大久保利通 歴史を踏まえて考える中曽根元首相合同葬の問題点

国葬の歴史に詳しい中央大の宮間純一さん=東京都八王子市東中野で2020年10月2日午後3時4分、古川宗撮影

 17日に東京都内で行われる故中曽根康弘元首相の内閣・自民党合同葬へ批判が高まっている。文部科学省が国立大学などに対し、合同葬当日に弔旗や黙とうを求める通知を出していたからだ。教育関係者からは「学問の自由の侵害だ」といった反発が出ている。また、国の予算から約9600万円が支出され、ツイッターなどでは「税金の無駄遣い」といった否定的な意見が相次ぐ。合同葬の歴史的起源をたどりながら、問題の所在を考えた。【古川宗/統合デジタル取材センター】

官房長官「弔意は強制を伴うものではない」

 まずは今回の経緯を振り返りたい。

 政府は2日、合同葬当日に各府省が弔旗を掲揚するとともに、午後2時10分に黙とうすることを閣議了解した。さらに同様の方法で哀悼の意を表するよう関係機関に協力を要望することも決め、加藤勝信官房長官は2日付で、萩生田光一文科相に周知を求める文書を出した。

 文科省はこれに基づき、国立大や所管する独立行政法人、日本私立学校振興・共済事業団、公立学校共済組合などのトップに対し、加藤官房長官名の文書を添付して「この趣旨に沿ってよろしくお取り計らいください」と記した通知を出した。都道府県教育委員会には「参考までにお知らせします」として加藤官房長官名の文書を送付。市区町村教委への周知を求めた。

 加藤氏は15日午前の記者会見で、記者にこのように質問された。

 「教育基本法14条では法律で定める学校は特定の政党を支持または反対の政治活動をしてはならないとある。自民党との合同葬であり、通知は違法または法に抵触するのではないか」

 すると、加藤氏の答えはこうだった。

 「一国の元総理大臣の逝去に対し、公の機関としても広く哀悼の意を示すよう協力を求める趣旨であり、強制を伴うものではありません。特定の政党を支持するための政治的活動には当たらず、文科省として教育の中立性を侵すものとも考えていないと承知しています」

 野党などからは反発が出た。共産党の志位和夫委員長は15日の記者会見で「(弔意を求める行為は)誰に対しても内心の自由にかかわる問題だ。国家が事実上弔意を強制することはやってはならない」などと強く抗議した。

 過去を振り返れば、元首相の合同葬は何度も行われているが、加藤氏が明かしたところによると、小渕恵三元首相(2000年)、鈴木善幸元首相(04年)、橋本龍太郎元首相(06年)の合同葬でも同様の通知がなされていた。ただ、宮沢喜一元首相(07年)の際は、遺族の意向で国立大などへの通知は行われなかった。

「葬儀に伴う政治性が問題」

 「国葬の成立」(勉誠出版)の著書がある中央大の宮間純一准教授(日本近代史)に今回の通知について尋ねると、「政府は『前例を踏襲しただけ』という主張かもしれませんが、今の時代にそぐわないし、それで済む問題ではありません」と否定的だ。

 さらに「政府は『強制ではない』と主張していますが、このような通知を出すこと自体が大学を萎縮させかねない。さらに弔意を示すかどうかは大学の判断に委ねられるべきもので、これに影響を与えかねない通知は、学問の自由の侵害になります。学問の領域への政治介入という点で、日本学術会議の問題と同じ構造といえます」と指摘する。

 そして「国葬などの公的な葬儀には『政治性』が内在しているところに問題があります」と言うのだ。

 宮間氏によると、合同葬にはルーツがあり、明治以降の歴史をひもとくと、1878年の大久保利通の葬儀にさかのぼるという。大久保は西南戦争の後、不平士族に…

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