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陸自の長距離砲訓練 記者の感じたリアルと非現実感

砲撃隊員たちが無駄のない動きで砲弾を榴弾砲に詰め込む=東富士演習場で2020年10月14日午後2時2分、松浦吉剛撮影

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 「発射10秒前」。自衛隊員たちのカウントダウンに、カメラを持つ記者の手に力が入る。ドーン、バドーン――。一斉に放たれた大砲の発射音と衝撃に思わず体がすくみ、シャッターが押せない。記者がいたのは、大砲からたった10メートルほど後方。一般公開される国内最大規模の実弾演習「富士総合火力演習」でも、ここまで大砲に接近できない。手で耳を塞いだ程度では、衝撃は大して変わらなかった。

展示された榴弾砲。砲身口径が155ミリある=東富士演習場で2020年10月14日午後2時14分、松浦吉剛撮影

発射音 陸自隊員も耳栓

榴弾砲の後継装備として陸上自衛隊が導入を計画している自走砲=東富士演習場で2020年10月14日午後3時44分、松浦吉剛撮影

 10月14日、富士山のふもとにある陸上自衛隊東富士演習場(静岡県御殿場市など)。火力戦闘を任務とする「野戦特科」の教育訓練が報道公開され、記者も参加した。

発射された砲弾が空中で爆発したり、地面に直撃したりする状況を、数百メートル離れた射弾下掩蔽部から確認した=東富士演習場で2020年10月14日午後2時55分、松浦吉剛撮影

 訓練で使われた大砲は、砲身の口径が155ミリの榴弾(りゅうだん)砲。陸自の主力火砲の一つで、射程は20キロを超える長距離砲だ。この日は、これが横一列に5門並ぶ。もちろん実弾だ。富士学校特科教導隊に所属する砲撃隊員たちが9人1組になり、きびきびとした動きで射撃を披露した。大きな射撃音だが、隊員たちは大丈夫なのだろうか。報道陣を引率した陸自隊員に尋ねると、「発射時の衝撃は砲の左右に逃がす構造になっている。それでも発射の瞬間はさすがに耳栓をつける」そうだ。

 砲撃隊員たちの眼前には小高い丘が横たわり、標的は3・5キロ離れた場所にある。長距離砲のため砲撃隊員たちは標的を直接目視しておらず、「間接照準」と呼ばれる手法を取っている。具体的には、撃退する目標を探索する「前進観測班」から、標的の位置情報が「射撃指揮班」にもたらされる。さらに指揮班がどのような角度に大砲を向ければいいのかを計算し、砲撃隊員に伝えるという流れだ。観測班は砲弾が命中したかどうかを確認し、照準が微調整される。訓練では事前に照準を合わせ、曇り空に向かって4発の連射が3回繰り返された。

着弾状況などが間近で体感できる「射弾下掩蔽部」=2020年10月14日午後3時21分、松浦吉剛撮影

着弾地点に接近

爆発したばかりの砲弾の破片=東富士演習場で2020年10月14日午後3時11分、松浦吉剛撮影

 それにしても発射音とは異なり、遠方で鳴る砲弾の爆発音はのどかに感じられた。今回は特別に着弾地点から数百メートルまで接近した。射撃場所から大型トラックの荷台に乗り込み、でこぼこした道を揺られること約20分。分厚いコンクリートでできた箱形の施設が現れる。「射弾下掩蔽部(しゃだんかえんぺいぶ)」(高さ約5メートル、幅約40メートル、奥行き約6メートル)だ。

 施設内に入り、防弾ガラスがはめこまれた細長い窓から外をのぞく。訓練の標的となっている黄色の風船があちこちに設置されていた。「弾着、いまあ」。大砲から発射された弾が計算上、目標付近に落ちたとの連絡が指揮班から流れると、火炎と煙が広がった。ぶわっと土砂が舞い散る。風船はあっという間に消えていた。施設は「榴弾が万一直撃しても耐えられる」と陸自隊員から説明されていたためか、発射時に匹敵するような衝撃は感じなかった。

 その後、着弾した現場に足を踏み入れた。榴弾は、敵の陣地を直撃するほか、敵部隊の上空で爆発して破片をまき散らすことで、相手にダメージを与える。現場にはでこぼこがあった。繰り返される射撃訓練でできたものだという。「できたばかりの(榴弾の)破片は熱く、鋭利です。触れる時は手袋をつけてください」。陸自隊員の説明を聞き、点在する灰色の破片に手を伸ばすと、熱を帯びたものが見つかった。手のひらに乗っかるその小さな破片からは、戦場のイメージは湧かなかった。【松浦吉剛】

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