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伝説の娼婦「ヨコハマメリー」見つめ続けた同志 銀幕と舞台で問いかけるもの

「横浜ローザ」を演じる五大路子さん。右のポスターのローザは新刊のカバーに使われている=横浜市港北区で

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 伝説の娼婦(しょうふ)、通称「ハマのメリー」が横浜から姿を消して四半世紀になる。今月、中村高寛(たかゆき)監督(45)の映画「ヨコハマメリー」が再上映され、メリーさんをモチーフにした一人芝居を続ける俳優の五大路子さんは「Rosa 横浜ローザ、25年目の手紙」(有隣堂)を出版した。2人は今、私たちに何を問いかけようとしているのか。

 横浜市中区のイセザキ・モールのあちこちで映画のポスターを見かける。顔を白く塗り、白いドレスを着た老娼婦を追ったドキュメンタリーは、2006年に公開されると大きな反響を呼んだ。

映画「ヨコハマメリー」=人人フィルム提供

 中村さん「映画を作り始めたのは1997年。公開当時は伊勢佐木町の変化を懐かしみながら見てくれた人が多かった。今ではメリーさんを知らない若者が増え、もう1回、お客さんがどんな反応をするかを知りたくなった」

 メリーさんは95年末に横浜を去った。映画では、メリーさんと関わった人たちの証言と映像から横浜の戦後が浮かび上がる。

 中村さん「教科書で学ぶ戦後史ではなく、市井の人々の生活を追いたいと思った。『裏の歴史』を知ることで、戦後は今と地続きなのだと感じてほしい」

 中村さんが8月に出した文庫本「ヨコハマメリー 白塗りの老娼はどこへいったのか」(河出書房新社)によると、取材は決して順風満帆ではなかった。横浜の娼婦を撮り続けた写真家、常盤とよ子さん(故人)からは「メリーさんは昔の人。若いんだから、もっと取り上げなきゃいけないことがいっぱいあるでしょ」とむげに協力を断られた。

 中村さん「当事者にしか戦後が語れないなら、その時点で終わってしまう。知らない世代だからこそ描けるものがあるのではないかという思いで映画を作った」

 行き詰まった中村さんに手を差し伸べた1人が五大さんだった。91年に山下町でメリーさんを見かけたのをきっかけに、五大さんは96年、一人芝居「横浜ローザ」を発表。以後、毎年のように公演を続け、15年には念願のニューヨーク公演を実現させた。しかし、五大さんもまた試行錯誤の繰り返しだった。

映画「ヨコハマメリー」を監督した中村高寛さん=横浜市中区の横浜シネマリンで

 五大さん「最初のうちはメリーさんに近づこう、メリーさんの思いを知ろうと挑戦していた。でも、いつしか『来年もローザに会いに来ますね』というお客さんの声を聞くようになり、メリーさんになろうとする必要はないと気がついた。今回、『Rosa』を書くことで自分を客観視できた面もある」

 横浜ローザの脚本を書いた杉山義法さん(故人)は「メリーさんの後ろにいる何十万という女性の総称としてのローザを書いてみようと思う」と五大さんに伝えたという。実際にメリーさんを知る元娼婦、三浦八重子さんは「舞台に対する闘志を尊敬しております。舞台を見ている私は思わず力が入ります」と励ましの手紙を送るほど、ローザのよき理解者だ。

 五大さん「新型コロナウイルスで今年の公演は中止したが、『来年、ローザを見るためにがんの手術を受けます』と言ってくれた人がいた。毎年、違うローザが生まれるし、コロナを経て来年はもっと変わる。私自身もそれを楽しみにしている」

 20ほども年が離れた中村さんと五大さん。世代と表現の手法は違っても、2人はメリーさんに触発された「同志」の関係だ。

 五大さん「生きるとは何かをローザに乗せて真剣に問いかけながら歩んできた。答えはいまだに出ていない。まだまだ旅は続いていく」

 中村さん「映画は公開されると監督の手から離れていくものだ。でも、この映画を横浜の人が愛してくれていて、その責任があるというか、最後まで関わり続けなければいけないんだなと思う」

 「ヨコハマメリー」は30日まで、シネマ・ジャック&ベティ(横浜市中区)で上映されている。【中田卓二】

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