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第70期王将戦リーグ特選譜

15時間近い大一番を制したのは持将棋経験者の豊島竜王 広瀬八段「どうしていいかわからなかった」

広瀬章人八段(左)と豊島将之竜王=それぞれ過去に撮影した別々の対局時の写真を組み合わせています

 豊島将之竜王と広瀬章人八段の対戦といえば、昨年の竜王戦七番勝負が思い出される。一昨年の七番勝負で広瀬が羽生善治九段を4勝3敗で破り、自身初めての竜王を獲得して羽生の通算タイトル100期目を阻止した。その最終局は山口県下関市で行われ、多くの報道陣が取材に訪れた。場所柄、宮本武蔵と佐々木小次郎の巌流島決戦のような趣で、歴史を刻んだ。

 その1年後に広瀬は豊島を挑戦者に迎え、1勝4敗で敗れて初防衛はならず、豊島が初めて竜王の座に就いた。島根県津和野町が舞台で、こちらも名所。スコアほどには離れていない接戦が続いたが、広瀬が得意とする終盤戦で精彩を欠いたのが敗因につながった。そして今年は、羽生が豊島に挑戦、第1局は豊島が先勝した。3人が交互に登場している状況だが、それだけ実力が安定しているともいえる。【山村英樹】=▲が先手、△が後手

 豊島2勝、広瀬1勝と、ともに負けなしで迎えた対局になった。いうまでもなく挑戦争いに関する大一番で、両者ともに気合が入っていた。前期は互いに1勝同士で対戦し、広瀬が勝って結果的には挑戦権獲得につながった。

<第70期大阪王将杯王将戦リーグ3回戦>

2020年10月15日

持ち時間各4時間

場所・将棋会館

▲豊島将之竜王(2勝)

△広瀬章人八段(1勝)

▲7六歩  △8四歩1 ▲2六歩  △8五歩

▲2五歩  △3二金  ▲7七角  △3四歩

▲6六歩  △3三角  ▲7八銀  △6二銀1

▲6七銀  △4二銀1 ▲7八金  △4四歩1

▲4八銀  △4三銀  ▲5八金  △5二金1

▲3六歩  △7四歩2 ▲4六歩  △4一玉2

▲4七銀  △6四歩  ▲6八玉  △6三銀1

▲3八飛  △7三桂5 ▲3五歩  △同 歩

▲同 飛  △3四歩4 ▲3九飛4 △9四歩13

▲9六歩1 △5四銀右3▲5六銀右 △3一玉3

▲3七桂1 △3五歩8 ▲4七金  △3四銀9

▲2九飛1 △4三金右2▲7九玉21 △1四歩14

▲1六歩1 △8一飛13 ▲7五歩31 △8四飛1

▲7六銀2 △6五歩9 ▲2八飛6 △8六歩18

▲同 歩  △6六歩1 ▲同 角3 △3六歩44

▲同 金  △3五歩  ▲2六金  △8六飛2

▲7七金16 △8一飛  ▲7四歩1 △8五桂10

▲8八飛11 △4五歩1 ▲3三角成44△同 桂1

▲8五銀  △8七歩4 ▲同 飛  △4八角3

▲7三歩成 △3七角成5▲7二と  △4一飛

▲7四角  △4二飛1 ▲7六銀  △2二玉2

▲8一飛成 △2六馬1 ▲6四歩  △4八馬5

▲7八玉4 △8四桂22 ▲7五銀24 △5七馬

▲8四銀  △8六歩1 ▲同 金8 △6六金5(第1図)

 この日は特別対局室で行事があるため、大広間の一番奥、高雄の間での対局になった。角換わり風の出だしだったが、豊島は▲6六歩と突いて角交換を拒否し、ともに雁木(がんぎ)の駒組みを進める相雁木になった。

 先手、後手が似た陣形になり、打開できずに千日手になる可能性もある陣形だが、豊島は早めに▲3八飛と寄り、3筋の歩を交換した。その後も駒組みが続いたが、歩を1歩持たせた代償に広瀬が△6五歩と先攻する流れになった。

 しかし、豊島は広瀬の攻めを受けながら桂、金を取らせる間に7筋にと金を作り、飛を成りこんで優位に立ったように見えた。一連の折衝で玉頭に入玉ロードが生じ、後手は堅陣ながら身動きが難しい。この時点で豊島は約1時間残しており(広瀬は19分)、余裕を持ってゴールを目指すのかと思われたが、前述の入玉がキーワードになる。

 第1図以下の指し手

▲6八桂  △2五桂1 ▲5八歩5 △同 馬

▲7五銀  △7七歩2 ▲8八玉8 △5六金4

▲同 桂  △8五歩2 ▲同 金5 △6五銀打

▲4四桂打11△7四銀  ▲3二桂成 △同 飛

▲7四銀  △6七馬2 ▲7七桂3 △6六桂

▲8七銀5 △4六歩4 ▲7六金2 △4七歩成2

▲9七玉10 △5六馬  ▲4四歩3 △同 金

▲4一竜  △3三玉  ▲6三歩成 △8四歩

▲同 金2 △4三金  ▲4五歩4 △7五歩

▲同 金  △7八桂成 ▲8六玉  △5九角

▲7八銀  △同 馬  ▲8五玉  △6六銀

▲7六金1 △6七馬  ▲8七金1 △7七銀成

▲9一竜  △8七成銀 ▲9四玉  △7六馬

▲8三玉  △3七角成 ▲6四歩  △4五銀右

▲1一竜  △2四玉  ▲1五歩  △同 歩

▲同 香  △3六歩  ▲1三香成 △6六馬

▲2二歩  △3五玉  ▲4一竜  △4二飛

▲5一竜  △4一金  ▲6一竜  △5四金

▲6九香  △9九馬  ▲6六桂  △5五金

▲5三と  △4四飛  ▲2一歩成 △3八と

▲5八香  △5六銀  ▲同 香  △同 金

▲5四桂  △4九飛成 ▲2二と  △2四歩

▲7三銀不成△7七馬  ▲6三歩成 △6九竜1

▲4一竜  △1七桂成 ▲2三と  △2五歩

▲9五歩  △同 馬  ▲2四金  △2六玉

▲3四金  △2七玉  ▲9三銀  △2六歩(第2図)

まで200手で持将棋

 ▲6八桂は銀取りを受けた手だが、面倒を見過ぎたか。▲5五歩と攻めに向かうか、▲8七玉と入玉を急ぐかの方が勝った可能性が高い。

 △2五桂で広瀬玉にも入玉の可能性が出てきたのが大きい。その後の△6五銀打が強手で、豊島は角を取られる羽目に陥った。入玉将棋の点数計算は玉を除いて大駒(飛角)が5点、小駒(その他)が1点と計算するので、大駒3枚を持った広瀬が優位に立った。双方24点以上あれば持将棋、どちらかが23点以下なら負けとなるルールだ。

 しかし、豊島は▲8三玉と入玉を果たし、点数勝負に持ち込む。その後は入玉将棋の独特な感覚が求められる展開になったが、今年度豊島が永瀬拓矢王座と叡王戦七番勝負で2局、持将棋になった経験があるのに対し、広瀬は棋士になってから持将棋で決着したことがない。

 両対局者はもちろん、控室でも若手棋士が双方の点数、とりわけ豊島が24点に達するかどうかを計算する。きわどい状況が続いたが、「広瀬八段に逸機があったのでは」と控室。終局直前、豊島の▲9…

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山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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