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的川博士の銀河教室

的川博士の銀河教室 618 金星に生命?

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雲からホスフィンを検出

 「明(あ)けの明星(みょうじょう)」「宵(よい)の明星」で親しまれている金星。皆(みな)さんも夕暮れの空低く現れている明るく輝(かがや)く「一番星」を見た経験があることと思います。

 図1は、日本の金星探査機「あかつき」の赤外線カメラが撮影(さつえい)した金星を覆(おお)う雲の様子です。ぶ厚い雲が全体を包んでいるのが分かりますね。金星表面に降り立つと、大気圧は90気圧以上、地表の温度は軽く400度を超(こ)える高温に達していることが分かっています。だから金星の表面は、人間が生きていける世界ではありませんね。

 ところが、金星の雲の中ならば、生命の基本になる材料が含(ふく)まれており、気候も穏(おだ)やかなので、生命が存在できるのではないかと、カール・セーガン博士が提唱しました。その論文を、私も若い頃(ころ)に読んだことがあります。そして最近になって、この金星の地表から50キロ上空の雲の中に「ホスフィン」(リン化水素)と呼ばれるガスが存在していることが明らかになりました。それが、生命の兆候を示しているのではないかと話題になっています(図2)。

 ホスフィンは致死(ちし)性の有毒ガスの一種で、第一次世界大戦中には化学兵器として使用されたことがあります。発生の源をたどると、動物の腸の中に加えて、ごみの埋(う)め立(た)て地や湿地(しっち)などで、酸素の少ないところにすんでいる嫌気性(けんきせい)細菌(さいきん)からも作られているようです。ただし、今でも農業や半導体産業で注意深く使われているのですが……。

 金星の雲にホスフィンが見つかったことがどうしてビッグニュースなのかというと、地球では、生き物からしか生成されないと考えられているからです。金星も地球と同じ岩石惑星(わくせい)の仲間ですから、ホスフィンがもし生物起源なら、ホスフィンを生み出した生き物がいるはずですね。金星の雲の中のホスフィンは、量がかなり多く、地球上のホスフィンの密度の数千倍もあるようです。ただしホスフィンは光によって絶え間なく分解されていきます。ということは裏を返せば、ホスフィンをうまく検知するためには、常にホスフィンを大気に供給し続けるメカニズムがあるはずです。

 金星についてはこのホスフィンを生み出しているメカニズムが、果たして生き物なのか、それとも物理・化学的な原因なのか、そういった詳(くわ)しい研究が行われていくでしょう。

 火星には薄(うす)い大気があり、生命がいるかもしれないとたくさんの探査機が訪れましたが、まだその証拠(しょうこ)は見つかっていませんね。今回の金星におけるホスフィンの発見は、米国ハワイにあるジェームズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡と南米チリにあるアルマ望遠鏡(写真)という二つの望遠鏡を使って行われたものです。今後は金星で生命を見つけようという動きが、探査機を含(ふく)めて、活発になるかもしれませんね。


的川泰宣(まとがわやすのり)さん

 長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。


日本宇宙少年団(YAC)

 年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp


 「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。

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