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東京フィルメックス ディレクターが語る東京国際映画祭との連携を決めた理由

東京フィルメックスのオープニング作品は、今年の審査委員長を務める万田邦敏監督の新作「愛のまなざしを」(C)Love Mooning Film Partners

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市山尚三さんインタビュー(前編)

 世界が注目するアジア映画を中心に上映する映画祭「第21回東京フィルメックス」が、例年より早い10月30日~11月7日に、有楽町朝日ホールやTOHOシネマズシャンテ(ともに東京都千代田区)などで開催される。今年から東京国際映画祭(TIFF)(10月31日~11月9日)との連携を深め、開催期間をほぼ同時期に設定した。東京フィルメックスのディレクター、市山尚三さん(57)に、連携により期待される効果などについて聞いた。【聞き手・西田佐保子】

TIFFとの同時期開催で相乗効果を狙う

 ――昨年の秋、市山さんに「TIFFと共同開催する可能性はありますか?」と質問したところ、「あり得ない話ではありません」と回答されました。実際、今年から連携を深めるとの発表がありましたが、その経緯についてお聞かせください。

 ◆昨年9月のベネチア国際映画祭で、同年にTIFFのチェアマンに就任された安藤(裕康)さんと会食した際、「TIFFを変えていきたい。フィルメックスを同時期に開催できませんか」と切り出されて、「できないことはありません」と伝えました。今年2月のベルリン国際映画祭でもその話が出て、実際には4月から調整に入りました。

 今回、(映画監督の)是枝(裕和)さんが提唱して実現した、TIFFと国際交流基金共催の「アジア交流ラウンジ」が開催されますが、同じ構想は安藤チェアマンの中にあったようです。映画祭は、お客さんに映画を見せる場であるのはもちろん、国内外の映画人が集まることで、新しい映画製作につながるチャンスが生まれる場でもあります。

東京フィルメックスのディレクター、市山尚三さん=提供写真

 今年は残念ながらゲストは来日できず、成果が出るのは来年以降ですが、フィルメックス、TIFF、TIFFCOM(TIFF併設の映像コンテンツマーケット)を同時期に開催することで、映画人の交流の活発化が期待できます。

 正直なところ、映画祭スタート当初は、TIFFと開催期間をずらさないと、フィルメックスがかき消されてしまうのではないかという不安がありました。「TIFFの選考にこぼれた作品が上映できる」との思惑もありましたが、20年間映画祭を続けて、実績を積み重ねてきたという自負もあります。

 お客さんの立場としては、見たい作品の上映時間が重なるという批判はあるでしょう。ですが、映画祭の方向性としては、同時期開催のメリットは大きいと考えています。

 ――今年、TIFFでは従来の「コンペティション」「アジアの未来」「日本映画スプラッシュ」部門を統合した「Tokyo プレミア 2020」部門を設けました。その作品選定コミッティメンバーの一人として市山さんが参加されていますが、これは連携の一環なのでしょうか。

 ◆安藤チェアマンから、連携についての話と並行して、「作品選定コミッティを作りたいので協力してほしい」と提案されました。「より広い視点から作品を集めたい」「さまざまな意見を聞きたい」というお考えがあったと思います。

 僕が選定に関わっているのは、「Tokyo プレミア 2020」全体の3分の2程度で、主に、昨年までの「コンペティション」「日本映画スプラッシュ」に該当する作品です。事務局が予備選考した作品をコミッティ全員で見て最終上映作品を決定するという方法です。TIFFに応募されてきておらず、私の方から推薦した作品もあります。

東京フィルメックスで上映予定のC.W.ウィンター&アンダース・エドストローム監督の「仕事と日(塩谷の谷間で)」=提供写真

 ――二つの映画祭で作品選定に関わる上で、困難はありませんでしたか。

 逆に選定結果が早くわかるので、お互いによかったと思います。フィルメックスもTIFFも、「この映画を日本で紹介できればいい」という思いがあります。一番えらいのは、映画を作る人です。「TIFFがどうしても上映したいのであれば、こちらは手を引きますよ」というのはおかしな話で、TIFFとフィルメックスが招待状を出して、どちらの映画祭を選ぶかは出品者の判断に任せます。

 ――TIFFでは今回も、マレーシアのエドモンド・ヨウ監督やフィリピンのラヴ・ディアス監督の新作が上映されるなど、ある程度「すみ分け」はありますね。

 ◆ディアス監督について言うと、ベルリンやカンヌで新作を見るたびに「TIFFで上映しないならフィルメックスで上映しますよ」と(昨年までアジアの未来部門のプログラミング・ディレクターを務めていた)石坂(健治)さんに話しています。どの映画祭であれ、日本で紹介されるべき映画だと思うので、TIFFで枠がなければ「いつでもフィルメックスで上映する用意はある」と伝えています。

 例えば、何らかの事情でTIFFがディアス監督の作品を上映できずに断っているときに、こちらが知らなければ「TIFFが招待しているはずだから」と思って声を掛けず、結果、日本で全く上映されないという事態が起きてしまう。ですので、“なあなあ”ではないですが、情報が行き来している方がいいですね。「お互いに良いプログラムを作りましょう。カバーされるべき映画がどこかで選ばれていればいい」というスタンスです。

東京フィルメックスで上映される特別招待作品の一つ、デヴィッド・クローネンバーグ監督「クラッシュ」(1996年)の4K修復版(C)1996 ALLIANCE COMMUNICATIONS CORPORATION, IN TRUST

 ――市山さんはTIFFで1992年から96年まで「アジア秀作映画週間」、97年から99年まで「シネマプリズム」部門の作品選定に携わっていました。97年のシネマプリズムでは、オリヴィエ・アサヤス監督、ロバート・アルドリッチ監督、井口昇監督など、国、年代、ジャンルを超えた短編を含む70本以上が上映されました。99年のロベール・ブレッソン特集における「白夜」上映後の観客の熱狂は今も記憶に残っています。当時と現在のTIFFとの違いはどこにあると思いますか。

 ◆批判ではないですが、ある時期からTIFFはコンペ作品の選定時、ワールドプレミア(世界初上映)にこだわるようになりました。私が関わっていた頃は、カンヌ国際映画祭でもベルリン国際映画祭でも、メインのコンペ部門以外であればどこで上映されていてもTIFFのコンペ部門の対象になっていました。

 コンペ部門で最高賞にあたる東京サクラグランプリを受賞した07年の「迷子の警察音楽隊」(エラン・コリリン監督)や08年の「トルパン」(セルゲイ・ドヴォルツェヴォイ監督)は、ともにカンヌのある視点部門における受賞作でしたが、それ以降、カンヌの出品作をコンペでほぼ選ばないようになりました。プレミア重視は映画祭の方針としてありだとは思いますが、作品のクオリティーには影響が出る可能性もあります。

 TIFFと違い、国際映画製作者連盟にも所属していないフィルメックスは「とにかく面白いと思った映画を上映する」をモットーに、他の映画祭に出品されようとも関係なく作品を選んできたからこそ、今年も豪華なラインアップになりました。プレミアを重視しない方が当然いい作品を選べるし、派手にもなる。それをどう捉えるかですね。

<(後編)有料配信も実施 東京フィルメックスディレクターに聞く映画祭の見どころ

【東京フィルメックス】

公式ウェブサイト :https://filmex.jp/2020/

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