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ALL FOR 2020

東京へ ともに歩む

毎日新聞

リオデジャネイロ五輪のカヌー・スラローム男子カナディアンシングルで銅メダルを獲得した羽根田卓也=ブラジル・リオデジャネイロのホワイトウオーター競技場で2016年8月9日、三浦博之撮影

アスリート交差点2020

行動が夢を叶える 水の呼吸つかむ感覚=カヌー・羽根田卓也

 ようやく9月に活動拠点のスロバキアに戻りました。競技が盛んな欧州を1年も離れていたのは高校卒業後に単身スロバキアに渡ってから初めてのことです。新型コロナウイルスの感染拡大は依然として収束していませんが、このまま日本でトレーニングを続けるわけにはいきません。10月から国際大会も再開されました。久しぶりにミラン・クバン・コーチと会い、新たな気持ちでトレーニングに取り組んでいます。

 新型コロナの影響で実戦的な練習からはかなり遠ざかっており、実戦感覚を取り戻すのに時間がかかることは覚悟しています。自分のリズムを取り戻すのに苦労するかもしれませんが、起こりうることだと想定しているので不安はありません。国際大会では結果を出すことにこだわらず、徐々に心と体のリズムを取り戻すことを意識して臨みたいと思います。来年の東京オリンピックに向けて、まずは今の自分の状況を確認できればそれで十分です。

無意識の中で水の力を利用できる感性を養うようにしている羽根田卓也=東京都江戸川区のカヌー・スラロームセンターで2019年10月20日、大西岳彦撮影

 実戦から離れていた間、逆に水と向き合う時間が増えました。通常であれば春先から夏にかけての時期は速いタイムを出すことにこだわりながら試合に臨みます。しかし、今年はレースが中止になったことで、初心に帰って競技の基本や極意を改めて考え直すことができました。その一つが「水の呼吸」です。水の呼吸をいかに感じ、それを利用しながらカヌーを進めるにはどうしたらよいのか掘り下げて考えました。

 競技者にとって水の流れに逆らうという概念はありません。逆流の中を進む場合、ある程度の力は必要ですが、いかに最小限の力にとどめられるかが重要です。流れには白波、渦巻きといったいろんな波があります。自分を助けてくれる波もあれば、邪魔になるものもある。どんな場合でも味方にできるかがポイントです。流れの中でどのように進むのかが分かってくると、カヌーはとても面白いスポーツだと実感できます。

 競技と向き合う中で、これまでは水を意識し過ぎていることに気がつきました。今は「俺は水なんだ」と思えるぐらい無意識でこげるように練習しています。考えながらパドルをさし、水を利用しながら力をもらう感覚、無意識に水の力を得られる感性を研ぎ澄ましています。無意識の動作こそ最も無駄がなく、水と同化することができれば究極の領域です。2004年アテネ五輪陸上男子ハンマー投げ金メダリストで、スポーツ庁長官の室伏広治さんとトレーニングを通じて親交があるのですが、室伏さんは人が気づかないこと、思いつかないことに目を向ける方です。その室伏さんから大事な時に集中する方法として「ゾーン」に入ることを教わりました。

 今季出場する予定の国際大会はワールドカップ(W杯)2戦。どこまで水と同化できるか試したいです。(あすは陸上・山県亮太です)

はねだ・たくや

 愛知県豊田市出身。高校卒業後からスロバキアを拠点とし、2016年リオデジャネイロ五輪ではスラローム男子カナディアンシングルで日本初の銅メダルを獲得。趣味は自粛期間中に始めた茶道。33歳。