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社会を映す鏡といわれる税制。そのあるべき姿を時の政権にもの申す政府税制調査会(首相の諮問機関)が、答申を含めた今年の報告書の提出を見送る。新型コロナウイルス禍で変化した社会に適合するのはどんな税体系なのか。政府税調は今こそ存在感を発揮すべきだが、一体何をしているのか。
今年の政府税調は1月に1回目の総会を開いて以降、コロナ禍で議論がストップ。委員全員が集まる総会を開催したのはその後、わずか2回だ。財務省幹部は「コロナ禍による社会経済の変化も大きく、答申を出せる段階にない」と説明する。報告書の提出を見送るのは、政府税調が現行体制に戻った2013年以来だ。
自民、公明両党の与党税制調査会が毎年度の具体的な税制改正内容を議論するのに対し、政府税調は大学教授などの有識者がメンバーで、大所高所から中長期的な課題を議論する。日本の税制は1949年の「シャウプ勧告」で所得税中心の税体制を確立したのが始まりだが、政府税調はその10年後の59年に法制化され、「シャウプ以来の税制改革」を志向する学者も委員に名を連ねてきた。
自民党税調全盛期だった80年代は、「税調のドン」と呼ばれた山中貞則・党税調会長が「政府税調は軽視しない。無視する」と語り、政府税調の存在が希薄だった。だが、加藤寛・慶応大教授や石弘光・一橋大学長ら「気骨」ある学者が政府税調会長を務めた90~06年ごろは増税の必要性にも踏み込むなど、一定の存在感を示した。
特に石氏は、当時の小泉純一郎首相に消費税率引き上げの重要性を唱えるなど、政治と一線を画す姿勢を貫いた。05年には所得税の給与所得控除や配偶者控除などの廃止・縮小を提言する報告書を発表。記者会見で「サラリーマンに頑張って(納税して)もらうしかない」と発言し、与党から猛反発を買ったが、持論を曲げることはなかった。
政府税調の存在感が低下し始めたのは、経済成長を重視する第1次安倍政権が誕生した06年。首相官邸は…
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