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余録

この秋とれた新米を…

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 この秋とれた新米を今年米ともいう。「病む母の粥(かゆ)にまづ炊く今年米/根岸善雄(ねぎし・よしお)」。句の作者の心のどこかには、コメには邪気を払い、人を元気づける霊力があると考えた昔の人の思いが生きていたのだろう▲民俗学者の柳田国男(やなぎた・くにお)によれば、昔は重病の人の耳元でコメ粒入りの竹筒を振って音を聞かせる「振り米」の習俗があったという。コメの霊力による回復を願ったのだが、やがて「振り米までしたのに定命だ」とのみとりの儀式となる▲またコメがハレの日の食物だった昔、火災や水害など凶事の際もコメが食べられたという。人の元気をよみがえらせる力が期待されたのだ。ならばコロナ禍の今こそコメの霊力の出番と思いきや、その需要の落ち込みが激しいという▲いや、こと家庭向け需要は巣ごもり消費で増えたのである。しかし営業自粛にともなう外食需要減、外国人観光客の需要消滅が、それを大きく上回る落ち込みをもたらした。例年のコメ需要減少幅の2倍を超える減り方となったのだ▲これを受け国が先ごろ発表した来年の主食用米の適正生産量の見通しは679万トン、今年より約5%引き下げられた。下げ幅は過去最大になる。価格低落を防ぐにはコメ農家に飼料用米や米粉用米への一部転換が迫られることになる▲人口の減少、消費のコメ離れにコロナ禍まで加わったコメ農業の苦境である。だが巣ごもり需要の増加には、もしやコメの癒やしの力がかかわってはいまいか。ご先祖の力も借りたいコメの霊力復活である。

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