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(岩波文庫 660円)
中学のとき、<少年少女日本文学選集>の第八巻『国木田独歩名作集』(あかね書房)で、「馬上の友」「画(え)の悲(かなし)み」を見つけた。ぼくの最初の読書だと思う。いまは岩波文庫の作品集『運命』に収録。懐かしいのでよく読み返す。
「馬上の友」は一五歳のときの、「かし馬」の家の友だち。彼は貧しくて学校に行けない。こちらは遠くの学校へ進むことになり、彼は馬に乗って見送ってくれる。もうここでいいから、というと、「もすこし」。そのあと無言で別れる二人の姿はいまも鮮やか。胸にせまる。「画の悲み」の少年は負けず嫌い。同じく画が上手で、性格温順な友だちのことが好きではない。ある日、画をかいている彼と、ことばを交わす。「君は何を書いて居るのだ」。二人はそれから、だいの仲良しになる。いっしょに画をかきに、野原を歩く。歳月が流れ、彼が一七歳で病死したと知り、ともに歩いた野末に行き、涙を流す。ふとしたことで…
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