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岩間陽子・評 『核のボタン 新たな核開発…』=ウィリアム・J・ペリー、トム・Z・コリーナ著、田井中雅人・訳
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◆『核のボタン 新たな核開発競争とトルーマンからトランプまでの大統領権力』
(朝日新聞出版・2530円)
「フットボール」の退役訴える
元米国国防長官で、アメリカの反核「四賢人」の一人でもあるウィリアム・J・ペリーの著作は、回顧録である『核戦争の瀬戸際で』も邦訳されているが、今回は特に「核のボタン」にこだわった一冊である。アメリカ大統領には、「核のフットボール」(核攻撃を承認するためのブリーフケース)が常に付き添っている。実際には物理的なボタンなどなく、カバンの中に核攻撃オプションのメニュー、認証コード入りのカード、防護電話などが入っており、軍の側近が携帯して大統領に随行している。本書は、トルーマン大統領以来、核攻撃を命令する権限がどのように変遷してきたかをまず扱っている。
広島と長崎に原爆が投下されたとき、トルーマン大統領はそれぞれについて明白な投下命令を出したわけではなかった。二発目が投下された後、三発目は自らの承認なしに投下しないように命じた。ここに核使用に関する大統領の専権が生まれた。アイゼンハワー政権を経てケネディ大統領が、偶発戦争の危険を極小化し、自らに権限を集中させるため「フットボール」を設計させ、1962年にはいかなる時でもフットボールがついてくると…
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