松本白鸚さん「一條大蔵譚」を語る 愚かなふりで身を守る公家 現代に通じる深い話=完全版
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「一條大蔵譚(いちじょうおおくらものがたり)」は、平家全盛の世に、わざと愚かなふりをして人々の目をくらまし続ける公家、一條大蔵長成を主人公にした作品である。
享保16(1731)年初演の人形浄瑠璃「鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)」の四段目部分。歌舞伎化され、ことに明治以降、ひんぱんに上演される人気作品となった。自分の身を守るために優れた資質を隠し通して生きざるを得ない人物を演じることは、俳優の意欲をそそるだろうし、観客の側としてもその意外性がおもしろい。
東京・歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」(11月1~26日)第三部では、松本白鸚さんが大蔵卿を演じる。母方の祖父、初代中村吉右衛門があたり役とした。
約半世紀の経験を重ね演じる
白鸚さんは初代吉右衛門の弟、十七代中村勘三郎の教えを受け、1972年12月に東京・帝国劇場で初演したが、2度目に演じたのは、それから時を経ての2019年1月の歌舞伎座。二代目白鸚襲名の翌年であった。
「(九代松本)幸四郎から白鸚になったのを契機に、昔演じた役をもう一度勉強し直してみようと思いました。47年前に演じた際の台本の書き込みをもとにしました」と振り返る。
白鸚さんは「王様と私」「ラ・マンチャの男」などのミュージカルや「アマデウス」など現代劇でも優れた演技を見せてきた。
「そういう状態で約50年を過ごしてきた自分が大蔵卿を演じる。その気持ちがすべてです」と思いを明かす。
「ミステリー劇を見ているよう」
平治の乱で、源義朝が敗れた後の物語だ。大蔵卿は時の為政者の平清盛に自身の愛人、常盤御前を妻として押しつけられた。常盤御前は元は…
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