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社説

菅首相の所信表明演説 大事な説明を欠いている

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 臨時国会が召集され、菅義偉首相による初の所信表明演説が行われた。国民から信頼される政府を目指し、「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義」を打破して規制改革を進めると語った。

 所信表明は、首相が内政や外交の基本方針を国会で示すものだ。にもかかわらず、首相は肝心な点を説明しなかった。

 まず日本学術会議が推薦した会員候補6人を任命しなかった問題に触れなかった。「なぜ除外したのか」という核心について、首相は詳しい説明を避けてきた。

 最近の報道各社の世論調査では、首相の説明が不十分だという回答が6、7割に達している。「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と紋切り型の答えを繰り返すだけでは、国民の理解は得られない。

 政治が科学を都合良く利用しようとしているというのが問題の本質だ。異論を排除しようという政権の体質も垣間見える。

 学術会議の組織や運営のあり方を持ち出して議論のすり替えを図るのではなく、任命しなかった理由や経緯を説明すべきだ。

 首相は演説に先立ち、「政策の大きな方向性や政権運営の決意を述べたい」と意気込みを語った。

 ところが、演説ではデジタル庁の新設や携帯電話料金の引き下げ、不妊治療への保険適用など個別政策を列挙するにとどまった。温室効果ガスの排出量について新たな削減目標を打ち出したが、全体の政策を貫く基本理念や国造りのビジョンを示さなかった。

 首相は「自助・共助・公助」と「絆」を掲げた。しかし、「そのために規制改革を進める」と言われても、首相が目指す社会像とどう結びつくのか分からない。

 政策を進めていく上では、その目的や決定過程を説明し、国民の理解を得ることが欠かせない。

 安倍前政権は、憲法に基づく野党の臨時国会召集の要求を放置するなど国会軽視が際立っていた。十分な説明を欠いたまま、与党の「数の力」で押し切るような姿勢を引き継いではならない。

 あすから各党代表質問が行われ、来週からは一問一答形式の予算委員会も開かれる。国民の信頼を強調するのであれば、疑問に向き合い、丁寧に答えるべきだ。

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