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第70期王将戦リーグ特選譜

命運分けた振り飛車 3年ぶりに指した永瀬王座が藤井王位に公式戦初白星

熟考する藤井聡太王位=東京都渋谷区の将棋会館で2020年10月26日午後(代表撮影)

 新型コロナウイルスの感染拡大のため、タイトル戦の日程が変更され、密集して戦われた今年。叡王戦、王座戦の防衛戦を戦った永瀬拓矢王座は間違いなく主役の一人だったが、好機も逃していた。6月に、棋聖戦、王位戦で続けて挑戦者決定戦で敗れ、タイトルを増やす機会を失ってしまった。

 その2棋戦で永瀬を破り、続けて2冠獲得まで達成してしまったのが藤井聡太王位。主役の一人というより、史上最年少の獲得などでほとんど話題を独占してしまった。永瀬にとっては悔しい思い出だろうが、以前から研究会を開く間柄だけに複雑な思いもあっただろう。

 そして、王将戦リーグが開幕。永瀬が開幕2連勝と挑戦に向け飛ばす一方で、藤井は羽生善治九段、豊島将之竜王に連敗し、苦しいスタートになった。豊島戦の敗戦から3週間がたち、永瀬戦に挑戦の望みをつなぐ。残り4連勝してもすでに単独で挑戦決定の可能性はなく、プレーオフに加われるかどうか。しかし、藤井なら我々の思いつかない結末をもたらすかもしれない。【山村英樹】=▲が先手、△が後手

<第70期大阪王将杯王将戦リーグ3回戦>

2020年10月26日

持ち時間各4時間

場所・将棋会館

▲藤井聡太王位(2敗)

△永瀬拓矢王座(2勝)

▲7六歩  △3四歩  ▲2六歩  △4四歩

▲2五歩  △3三角  ▲4八銀  △9四歩

▲9六歩1 △3二銀  ▲5八金右1△4二飛

▲5六歩1 △6二玉1 ▲6八玉  △7二玉

▲7八玉  △5二金左 ▲5七銀1 △4三銀

▲3六歩4 △5四歩  ▲7七角18 △6四歩3

▲4六銀16 △8二玉5 ▲3五歩1 △7二銀

▲3四歩29 △同 銀1 ▲3五歩1 △4三銀3

▲3八飛  △4五歩17 ▲3三角成1△同 桂

▲5七銀3 △2五桂4 ▲3四歩4 △3二歩3

▲6六銀40 △4四角27 ▲3一角39 △6五歩25

▲7七銀  △5五歩1 ▲3六飛10 △5六歩26

▲同 飛2 △5三歩  ▲4二角成13△同 金

▲2一飛2 △3八角2 ▲3三歩成7△同 歩3

▲1一飛成 △2九角成 ▲1六飛1 △1九馬5

▲1三飛成 △6四馬29 ▲2三竜3 △3七桂成

▲2一竜上 △5一香(第1図)

 本局には開始早々、驚かせられる。永瀬は12手目に△4二飛とし、四間飛車の作戦をとった。低段の頃は振り飛車党だったが、その後、居飛車党に転向して実績を上げてきた。約3年ぶりという振り飛車に本局の命運をかけた。

 藤井も「予想はしていなかった」という。△9四歩と突かれたところで「振り飛車の可能性もあるかと」。その後は「序盤で工夫されて損な形になってしまったのかな」と語った。

 永瀬は「以前とは囲い方が変わったり、振り飛車が新鮮な感じで指せた」という。公式戦でいまだに藤井に勝ったことがなく、意表を突く振り飛車で勝負という凝った見方もあったし、つい先日まで久保利明九段と王座戦五番勝負を戦って、振り飛車の感覚を間近に感じたとの見方もあった。

 △5一香まで進んだ第1図。先手は2枚竜を作ったが、後手も馬と角が中央で働いている。駒割りは後手の桂得。スポーツニッポン紙で本局について語る渡辺明王将が控室にいて、「振り飛車が指せるのか」と検討していた。意表の四間飛車に対し、藤井が対応し損ねたのかもしれないが、大差がついているわけではない。逆に第1図以降は藤井が力を発揮する。

 第1図以下の指し手

▲6八金寄19△5四歩5 ▲4六歩1 △3四歩21

▲5一竜1 △同 金4 ▲同 竜  △5二金

▲4一竜  △7一飛10 ▲同 竜  △同 角

▲9五歩1 △7四歩  ▲8六香1 △2八飛8

▲9四歩  △9二歩  ▲8五香打2△8四桂1

▲4五歩5 △4六馬1 ▲4一飛1 △1七角成1

▲8四香2 △同 歩  ▲4四桂  △6六歩2

▲同 銀3 △6一香  ▲5三歩2(第2図)

 すでに残り1時間を切っていた藤井は、19分考えてじっと▲6八金寄と固めた。形勢不利を自覚していただけに、▲5一同竜で勝負するなどが検討されていたが、ここで手を渡したのが藤井らしい強さ。簡単には崩れない。

 「△5四歩が変だったかも」と局後に永瀬は語っていたが、馬と角の利きを生かす意味でも検討に上っていた手だった。▲4六歩も落ち着いた手で、後に▲4五歩の取り込みが意味を持つことになる。

 藤井の心理を読んだのだろうか。永瀬は△3四歩と突いて1一の竜に…

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山村英樹

1981年入社。青森支局を経て1986年から東京学芸部で囲碁将棋などを担当。

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