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この国はどこへ コロナの時代に 作家・辺見庸さん 首相の「特高顔」が怖い

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インタビューに答える作家の辺見庸さん=東京都内で2020年10月5日、幾島健太郎撮影
インタビューに答える作家の辺見庸さん=東京都内で2020年10月5日、幾島健太郎撮影

 2年前にお会いしたときは「老人のテロ」をテーマに小説を書こうとしていた。進捗(しんちょく)を聞くと「コロナでなかなか難しいね」と言う。「やっぱりコロナが、物語性を奪うというか、壊しちゃうっていうか。物語る力がやられる感じがしてね。パッションが起きなくなっている」

 疫病の騒ぎが、人の情操に影響を与えるのか。「そう。だからコロナを取り込んだような良い小説は出ないと思うよ」。あくまでも作家、辺見庸さん(76)の直感である。でも、なぜか、詩だけは書いているそうだ。

 洋食店で席に着くとメモを取り出し、自殺の話を始めた。

 「僕はマンションの上の方に住んでいて、ベランダから駅のホームがよく見えるんです。最近、飛び込み自殺があって、実際に見たわけじゃないけど、結構ショックでね。通いのヘルパーさんも心痛めてて。そしたら、8月の全国の自殺者数が1849人(9月10日の速報値)で前年同月と比べ、246人増えたと警察庁が発表して、男は60人増えて1199人だけど、女性は186人も増えて650人になった」

 数字に目を落としながら「年間自殺者が3万4000人台(2003年)という時代もあり、全体としては減ってはいるんだけど」と断り、こう続けた。「要因としてはコロナによる雇い止めや景気悪化があると思うけど、もっと深い感じを受けるんです。若い人、女性の自殺が増えている。貧乏で仕事がないだけじゃなく、生きること自体が報われない感覚がまん延しているんじゃないかと思って」

 社会の変化の兆しが一番弱い層に表れるということなのか。

 辺見さんは体が不自由なため、多くの時間を部屋で過ごし、ベランダからの風景、ネットを通し社会の変化を感じている。

 「死が近いなと思う。特に若い女性たちにとって死が身近になっているのではないか」。男女間の職位、賃金の格差が際だってひどい日本。「コロナ下で、行動の変容、自粛があるけど、そういう時の日本はどこの国とも違っているよね。政府が権力を発動する前に、人々が自粛しちゃう。下々の方が率先して自粛警察になるのも、昔から変わらない。僕はそこに薄気味の悪さを感じ、それが人を絶望させている面もあると思う」

 辺見さんは…

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