メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

社説

コロナ下の読書週間 生き方を見つめる機会に

[PR]

 本は生活必需品である。そんな思いを改めてかみしめた人も多かったのではないか。

 新型コロナウイルスの感染拡大による「巣ごもり生活」の広がりや、夜の会合自粛などで自宅で過ごす時間が増えた。

 忙しくてなかなか読めなかった本に手を伸ばし、生き方を見つめ直した人もいたことだろう。

 読書週間が始まった。1947年、読書の力で平和な文化国家を目指す運動として生まれた。コロナ下で知った本との出合いの楽しさを忘れずにいたい。

 全国出版協会・出版科学研究所の推計によると、1~6月の書籍・雑誌の紙と電子版を合わせた売り上げは、昨年同期に比べ2・6%増加した。

 緊急事態宣言で、多くの書店は休業や営業時間短縮を余儀なくされた。それでも、外出や県境を越えた移動の自粛が呼びかけられた5月と6月、書店での売れ行きは昨年を上回った。

 書籍では、感染症という不条理と闘う人々の連帯を描いたカミュの「ペスト」や、疫病の歴史を扱った本が売り上げを伸ばした。

 仏教の教えや敗戦経験から得た人生論をつづった五木寛之さんの「大河の一滴」もよく読まれたという。混迷の時代に、生き方の指針が求められたのだろう。

 一斉休校による参考書、児童書の特需や、ビジネス書の好調も指摘される。しかし、知識を得るだけではなく、コロナが人類にもたらしたものを改めて考察し、思索を深める契機となったのではないだろうか。

 アフリカ・ブルンジ出身のガエル・ファイユさんの自伝的小説「ちいさな国で」に印象的な一節がある。

 「一冊の本に人を変える力があるって言うんですか?」「本をあなどってはだめ。本は眠れる精霊ですよ」

 残酷な内戦を目の当たりにした主人公の少年は、本と出合うことで新しい地平が開かれる。

 物理的に閉じ込められていても、本は想像の力で精神を自由に解き放してくれる。それこそが読書の醍醐味(だいごみ)だ。

 今年の読書週間の標語は「ラストページまで駆け抜けて」だ。生涯の友となる一冊を見つけたい。

コメント

投稿について

読者の皆さんと議論を深める記事です。たくさんの自由で率直なご意見をお待ちしています。

※ 投稿は利用規約に同意したものとみなします。

利用規約

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 女湯侵入容疑で広島県職員を逮捕 化粧し女性用かつら着用

  2. 自民岸田氏「更なる経済対策が必要」 3次補正審議中、異例の言及

  3. 「地域から協力金集めて慰安旅行」 幽霊消防団員巡り告発続々 地域社会にあつれき

  4. 「重症者、死者がさらに増える」 研究者が警告する「危うい状況」と必要なリセット

  5. ファミマ・お母さん食堂に異議 声上げた高校生に「慎吾ママ」生みの親がエール

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです