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温室ガス「50年ゼロ」 脱原発と両立する戦略を

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 温室効果ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする目標を、菅義偉首相が表明した。

 実質ゼロとは、排出量と森林などの吸収量が釣り合う状態で、気候危機を回避するには不可欠だ。

 50年までの達成は、パリ協定に参加する全ての国に求められている。既に120カ国以上が賛同し、世界最大の排出国である中国も「60年までに実質ゼロを達成する」と9月に表明した。

 だが日本の削減目標は、13年度の実績を基準に「30年度に26%削減、50年までに80%削減」という内容で見劣りしていた。これでようやく出発点に立ったといえる。

 今後は達成に向け、製造、運輸、家庭などあらゆる分野での改革が必要となる。中でも再生可能エネルギーの普及が急務だ。

 日本は電力の8割近くを、化石燃料を燃やす火力発電に依存している。太陽光や水力、風力といった再エネは2割に満たない。

 エネルギー基本計画では、30年度の再エネ比率を22~24%と定める。これでは不十分だ。現在、計画の改定が進んでいるが、電源構成を抜本的に見直すべきだ。

 20~22%とされる原子力の構成比率見直しは必須だ。政府は既存原発の再稼働を進める一方、老朽原発の建て替えなどで一定量を確保したいと考えている。

 しかし、原発には重大事故のリスクがある。安全確保のための費用は膨大で、「安価なエネルギー」という考えは世界的に通用しない。政府には、脱原発依存への道筋を示す責任がある。

 欧州では、新型コロナウイルスの流行で落ち込んだ経済を、環境への投資で復活させる「グリーンリカバリー(緑の復興)」が盛んだ。これは菅首相が強調する「経済と環境の好循環」にも沿う。

 再エネ技術の改良、水素エネルギーや二酸化炭素回収・貯蔵といった研究開発への積極的な投資で、脱炭素社会を実現させたい。

 「実質ゼロ」の約束を担保する仕組みも必要だろう。温室効果ガスの排出量に応じて課金する「炭素税」の議論に加えて、地球温暖化対策推進法に今回の目標を明記することも検討してほしい。

 目標へのハードルは高く、時間も限られる。口約束で終わらせないための戦略作りが急がれる。

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