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毎日新聞社のバリアーゼロ社会実現キャンペーン「ともに2020」などに提言してもらう「毎日ユニバーサル委員会」の公開シンポジウム「ともに。~私たちにできること」(毎日新聞社主催、東京都文京区共催、日本パラリンピック委員会、日本オリンピック委員会後援)が14日、文京区の文京シビックホールで開催され、約100人が参加した。
第1部は、東京パラリンピックで活躍が期待される選手らが「パラリンピックが発展させる共生社会」をテーマにトークショー。第2部は、毎日ユニバーサル委員会の第8回座談会がパネル討論形式で行われた。【司会は第1部がフリーアナウンサーの山形祐子さん、第2部が小松浩・毎日新聞主筆、写真は竹内紀臣】
◆トークショー 「共生社会の実現」へ
前川選手 他人の「大切なもの」理解/太田選手 一言の気遣いで安心感
山田選手 僕らの姿に触れてほしい/越智氏 先入観の壁取り払える
山形さん(司会) パラリンピックが目指す理念の一つに「共生社会の実現」があります。選手の皆さんはどのように考えていますか。
前川楓選手 「共生」というと一見難しい言葉のように思われますが、人間は誰でも大切にしていることや、好きなことが違うと思います。自分とは違うものを目にした時に「普通ではない」などと思うのではなく、「こういう考え方もあるんだ」「この人はこれをすごく大切にしているんだ」と思える社会が、共生できている社会だと感じます。たとえ他人が大切にしているものを理解できなくても、「大切にしているんだ」ということ自体を理解してあげると、もっとすてきな社会ができあがっていくと思います。
太田渉子選手 私は小さいころからパラリンピック競技のスキーを通じて、自分と同じように手の短い人や目が見えない人、脚が不自由な人と一緒に生活をしてきました。そのため、周りにさまざまな人がいるというのが当たり前でした。大人になって「障害があって可哀そう」などと思われたり、言われたりすることもありましたが、小さいころからさまざまな人がいて当たり前という環境で過ごしていると、障害に対する無意識の差別や偏見はなくなると思います。パラリンピックをきっかけに「社会の中にはさまざまな人がいて当たり前」ということが広まれば、パラリンピックを東京で開催する価値や意義が高まり、よりよい社会につながると思います。
山田拓朗選手 僕自身は先天性の障害で、生まれた時から左腕の肘から先がありませんでした。途中で何かを失ったわけではなかったので、自分が他の人とは違うという自覚はあまりなく過ごしてきました。長く競技に携わり、自分が競技をすることで何を伝えられるのかということや、パラリンピックの意義を考えて競技に取り組んでいます。人は見たことがないものや、自分と違うものに遭遇した時に、なんとなく壁を感じてしまうことがあります。そういう意味で、僕らがそれぞれの競技に一生懸命取り組み、試合で活躍し、多くの人にその姿を見てもらうことで、少しでも見慣れてもらうという役割を果たすことができると感じています。
自分としては、パラリンピックや競技をすることがそのまま共生社会につながるとは思ってはいませんし、メダルを取ればそういったものが大幅に改善されるかと言われれば、そうではないと思います。ただ、活躍してよい成績を残せば残すほど、より多くの人の目に触れることができます。そういう意味でも自分たちが競技を続ける意味があると思っています。
山形さん ファインダーを通して選手を見つめてきた越智さんはいかがですか。
越智貴雄さん 「知る」ということがすごく大事です。知らなかったら、どうしても先入観が入ってしまいます。僕自身、パラリンピックを最初に撮影したのは2000年シドニー大会です。五輪の撮影をした後に急きょ、パラリンピックも撮影してほしいと言われました。最初は依頼を受けたことがうれしかったのですが、その後どんどん不安になりました。パラリンピックという言葉は知っていましたが、障害がある人がするスポーツという情報しか知りませんでした。「頑張っている人」「障害があって可哀そうな人」というような先入観がありました。
ただ、それは僕自身が勝手に作っていた壁でした。実際にパラリンピックが始まると、義足の陸上選手が100メートルを10秒台で走ったり、車いすバスケットボールの選手が激しくぶつかり合い、片輪だけで立ってダンクシュートのようにゴールを決めたりしていました。競技の様子を知ったことで、すごく世界が広がりました。今年8月に「切断ヴィーナスショー」という義足の人をモデルにしたファッションショーを開催しましたが、20年間パラスポーツを取材して、義足のアスリートが躍動する姿がかっこいいということを知っていたからこそできた企画です。知ることが大きなきっかけになったと感じています。
山形さん 共生社会の実現に向けて、どのような改善が必要だと思いますか。
太田選手 日本には街中にかなり点字ブロックもありますし、駅ではホームドアが作られたり、建物もスロープがついたり、ハード面で街の改善は進んでいると思います。ただ、「心のバリアフリー」という点ではまだまだなのかなと感じます。海外では、階段が多く、点字の案内がないこともあって不便ですが、「大丈夫?」「何か困っている?」と声をかけてもらえることが多いです。日本では環境が整っているだけに、逆に「一人でできるだろう」と思われるかもしれません。一言声をかけてもらえるとすごく安心するので、そういった気遣いがあればよりよいと思います。
越智さん 海外に取材に行く時は、実は出国までが一番大変だったりします。70キロぐらいの重い機材を持っていくことが多く、これだけの機材があるとエレベーターに乗りたいのですが、日本では混雑している時間には大抵使うことができません。なぜかというと、荷物を持っていない人もエレベーターに乗ろうと並んでいるからです。車いすの人も同じような経験をしたことがあると聞いたことがあります。
一方、英国などでは、どれだけ混雑していてもエレベーターを使えないということはありません。さらに、困っていたら必ず誰かが声をかけてくれるので、ハード面が整っていなくても、不便に感じたことはありません。なぜ日本とは違うのかを考えると、障害のある人や車いすの人、視覚障害のある人などが積極的に街に出て行っているから、周りの人たちも困っている人がいることをきちんと理解しているのだと思います。双方がつながっていることが、共生社会に近づくヒントなのではないでしょうか。
山田選手 日本でスロープや点字ブロックなどが充実していくことはもちろん悪いことではありません。ただ、それがあるが故に周りで見ている人たちが「一人でもなんとかなってしまうのでは」と、声をかけることにちゅうちょする場面がたくさんあるように感じます。一方で、困っている人の側が「どうして助けてくれないんだ」というような主張をすることもあります。ただ、困っているなら、自分から言うこともすごく大切なことだと感じます。困っている人がいたら助けることも、自分が困っていたら助けてほしいと声をあげることも、両方普通のことだと思います。
基本的なコミュニケーションという当たり前のことが普通にできるような世の中になれば、どちらかが特別な配慮をしなければならない状況はなくなり、困る人はいなくなるのではないでしょうか。
前川選手 周りとコミュニケーションを取ることで共生が進むという面もあると思います。私はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で、自分がトレーニングをしている様子や、義足が大好きなので外装がおしゃれな義足をアップしたりしています。すると、「義足ってかっこいいですね」と言っていただくことが増え、自分が発信することも大切だと感じました。越智さんが開催したファッションショーに出演した後には、海外の服のブランドから声をかけていただき、すごく面白い経験ができました。
■人物略歴
パラ陸上・前川楓(まえがわ・かえで)選手
中学3年の時の交通事故で右もも下を切断。2016年リオデジャネイロ・パラリンピック走り幅跳び4位。19年世界選手権4位入賞で東京大会代表内定。三重県出身、22歳。
■人物略歴
パラテコンドー・太田渉子(おおた・しょうこ)選手
生まれつき左手の指がない。2010年バンクーバー冬季パラリンピックのスキー距離で銀メダル。パラテコンドーに転向し東京大会代表内定。山形県出身、31歳。
■人物略歴
パラ競泳・山田拓朗(やまだ・たくろう)選手
生まれつき左肘から先がない。パラリンピックには日本歴代最年少の13歳で臨んだ2004年から4大会連続出場。16年リオデジャネイロ大会銅メダル。兵庫県出身、29歳。
■人物略歴
写真家・越智貴雄(おち・たかお)氏
大阪芸術大写真学科卒業後、ドキュメンタリー写真家として活動開始。2004年にパラリンピックの魅力を伝える情報サイト「カンパラプレス」を開設した。大阪府出身、41歳。
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