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#排除する政治~学術会議問題を考える

「発禁処分までほんのひとまたぎ」 作家・村山由佳さんが語る言論の今と伊藤野枝

インタビューに答える作家の村山由佳さん=東京都渋谷区で2018年3月15日、武市公孝撮影

 日本学術会議が新会員として推薦した候補者105人のうち6人が任命拒否された問題で、小説家の村山由佳さん(56)は「今後は権力の介入が小説や表現の世界へ広がるのではないか」と懸念を示す。折しも最新作は、権力の弾圧と闘いながら、自分の生きざまを貫き通した大正時代のアナーキスト、伊藤野枝の評伝だ。村山さんは直木賞作家、さらには恋愛小説の名手として知られ、政治的な発言はほとんどなかった。なぜ、声を上げているのか。野枝の生き方とともに考えた。【上東麻子/統合デジタル取材センター】

発禁処分はすぐそこに来ているのでは

 ――ツイッターで「#日本学術会議への人事介入に抗議する」というハッシュタグを付け、「水はいきなり煮え湯にならない。火を消し止めるなら今だ」と投稿されていました。任命拒否のニュースをどう感じましたか?

 ◆今回は学問分野への介入でしたが、歴史上、権力者にとって都合の悪い雑誌や小説が、発売禁止処分にされた例はいくらでもあります。

 またここ数年をみても、表現の自由が脅かされたケースが相次いでいます。たとえば安倍(晋三前首相)さんの選挙演説の際、聴衆の中にいた老齢のご婦人がただ黙って「増税反対」のプラカードを掲げていただけで警察官から排除されました。また、若い女性が同じく声をあげただけで婦人警官から「静かにして。ジュースおごってあげるから」などと言われて無理やり連れ出されたと報道されています。それから「表現の不自由展」があった「あいちトリエンナーレ」に、補助金がいったん不交付となるなどの圧力がかかりましたよね。

 これらの流れからすると、「時の政府に都合の悪いことは力で封じる」という言論弾圧に近い事態がいつ起きてもおかしくない、という空気を感じていました。とても人ごとではありません。それこそ身を削って書きあげた小説が突然発禁を食らって、お上にいくら理由を聞こうが「法に基づいて適切に対応した」としか答えてもらえない地点まで、ほんの「ひとまたぎ」のところにいるのではないか。「憲法で表現の自由が認められているからありえない」と笑う人もいますが、このまま権力者が国民への説明なしに勝手に判断して、そうすることが許される社会になったら、力を持っている人たちは味をしめて何でもするようになりかねません。憲法や法律を自分に都合良く解釈して行動する権力者は過去にいくらでもいたのですから。

政治的発言をすればすぐにバッシングが

――村山さんのツイッターを見ると、普段は猫や食べ物の話が並んでいます。作品もこれまで政治に関係するものはなかったように感じます。

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上東麻子

1996年毎日新聞入社。佐賀支局、西部本社、毎日小学生新聞、東京本社くらし医療部などをへて2020年から統合デジタル取材センター。障害福祉、精神医療、差別、性暴力、「境界」に関心がある。日本新聞協会賞を受賞したキャンペーン報道「旧優生保護法を問う」取材班。共著に「強制不妊」(毎日新聞出版)。散歩とヨガ、ものづくりが好き。

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