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特集ワイド

学術会議問題◀◀井筒監督 若者よ、立ち上がれ キナ臭いよな 権力むき出しの暴力

=玉城達郎撮影

 温厚そうな「令和おじさん」が突如、強権的な「素顔」を国民にさらした。科学者の代表機関「日本学術会議」の新会員候補6人に対する任命拒否問題である。なぜ除外したのか。菅義偉首相からの説明はまだない。この人は、この事態をどう見ているのか。歯に衣(きぬ)着せぬ発言で知られる映画監督の井筒和幸さん(67)にご意見、伺った。

 「何やらキナ臭いよな」。インタビュー序盤、井筒さんはメガネの奥の眼光鋭く、こう断じた。「キナ臭いってのはさ、何がどうなるやらよう分からんって意味でしょう。すぐ我々映画屋に負荷がかかるとかいう話ではないと思うし、直ちに表現の自由を奪うかは別次元の問題だしね。それでも、なんかキナ臭いって感じてしまうんだなあ」

 8年ぶりの新作映画「無頼(ぶらい)」の封切りまで2カ月と迫った10月21日。若いスタッフが慌ただしげに作業をしている事務所内で、取材に応じてくれた井筒さんの表情が陰った。「映画屋になって(半世紀の)この間、世の中の空気はだいぶ変わった。締め付けられている感じがして、ほんとに自由がないね」

 ピンク映画でデビュー。20代の頃は「わいせつ」の定義を巡り、映倫と「ケンカ」もした。「映倫は一つの自主機関だけど『権力』でもある。どんな時でも『表現の自由』って何やねんちゅうのを考えてきたよ。ところが今はどうよ? 自由とは何かを議論する空気もない」

 ここで「ふう」と、ため息。「若い映画屋に聞きたいよ。表現の自由のことを考えたことあるのって。政治とか、宗教とか『ちょっとにおうもの』には初めから触れないだろ。それで本当に表現の自由を勝ち取ったつもりなのって」。自由は戦って勝ち取るのだとの覚悟がにじむ。「こういうことを言うとどうなるのかな、なんてことばかり言う人間が増え、僕まで『どうしたもんかなあ。自分の表現をフォローしてくれる人がいなかったらどうしよう』ってなっている。そんな時は孤島に追いやられた気分になるんだよね」

    ◀◀

 世の空気はなぜ変わってしまったのか。井筒さんは易しい言葉で核心を突く。「これって『作られた』空気だよな」と。表現の自由や言論の自由が一見侵されていない「ふう」を装いながら、忖度(そんたく)や自粛の形で同調を迫る。井筒さんは「結局、日本って村社会のまま。日本人も村意識が抜けていないの。たとえ1人でも村外れに遊びに行くヤツがいたら、残りの村民は血眼で捜そうとする。ほったらかしにはしてくれないの。はみ出した人がすごい発見をするかも。そもそも社会全体ウソっぽいんだし、はみ出す人がいてもいい。だけど、村にはそんな発想がハナからないの」。

 井筒さんが、村社会における科学の「受難」を説く。「科学はほったらかしにされても自由に育つもの。誰かが、ましてや政治が規制するものじゃない。研究者は言われなくても日々科学を深めていますよ。排除された6人の研究領域は、政治や歴史検証など人文・社会科学の分野。そうした学問こそ、時の政権への忖度なしに研究が進められるべきでしょ。なのに政府は彼らを除外することで、その学問の力まで弱めようとしている。政府がしていることは、『我々の歴史認識、政治手法にふれるな』という、これは恫喝(どうかつ)だよ」

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