メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

<どうも今次の新体制に対する演芸界の連中には…

[PR]

 <どうも今次(こんじ)の新体制に対する演芸界の連中にはこの種のゆきすぎが、まことに少なくないようである>。寄席芸能研究家の正岡容(いるる)が随筆に苦々しく書き残している。太平洋戦争開戦の前年、東京の落語家らが自ら「禁演落語」を制定し、上演を封印した▲すでに戦時体制であり、芸能も「べからずべからず」の自粛を求められていた。約500の演目から時局にふさわしくないとして選んだのは、遊郭や浮気などを扱った53演目。言うなれば、お上へのそんたくだ▲なかには今もよく演じられる「明烏(あけがらす)」「居残り佐平次」「紙入れ」といった名作が含まれていた。正岡によると、当局は改訂してできるものは適当にやりなさい、という反応だったとか。「ゆきすぎ」との苦言はもっともだろう▲開戦の年の10月30日、封印の証しとして建立された「はなし塚」が除幕された。東京・浅草にほど近い本法(ほんぽう)寺に今も建つ。碑の裏面に刻まれた<自粛協定して職域奉公の実を挙げたり>という言葉に時局が濃く浮かぶ▲東京大空襲では本堂をはじめ、周囲は焼け野原になった。ところが、はなし塚は奇跡的に無傷だったというから因縁を感じずにはいられない。封印が解かれたのは終戦から約1年後。多くの命が失われた空襲と、自由な表現が奪われた時代の生き証人だ▲戦争に限らず、コロナ下で文化芸術は自粛を強いられた。うかうかしていると、また「べからずべからず」の時代がやって来ないとも限らない。そんな戒めも聞こえてきそうだ。

おすすめ記事
広告
毎日新聞のアカウント
ピックアップ
話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. GSで偽1000円札使われる 山口・下関 透かしある手の込んだ作り 記番号や印影はなし

  2. 時短に「またか」「悩む」 東京都内の飲食店悲鳴 「従わないと白い目で…」

  3. ソフトバンクが日本一 巨人に4連勝し、4年連続11回目 シリーズ最多12連勝

  4. 「感染を制御できない」 専門家に強い危機感 会合後に漏れた本音

  5. 経路不明急増、保健所パンク…「日本モデル」もう限界 「政府も危機感共有を」

編集部のオススメ記事

のマークについて

今週のおすすめ
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです