菅義偉内閣発足後、初の各党代表質問がきのう、衆院本会議で始まった。
残念ながら、首相は従来の発言を繰り返すだけで、さらに踏み込むことはなかった。これでは国会の議論は成り立たない。首相は審議を恐れているのではないかとさえ感じさせる答弁ぶりだった。
日本学術会議の新会員候補のうち6人を任命しなかった問題が典型的だ。
所信表明演説で一切、触れなかっただけに、立憲民主党の枝野幸男代表と泉健太政調会長が追及したのは当然だ。
これに対して首相は、今回の措置に違法性はなく任命拒否を撤回する考えはないと明言し、組織見直しの必要性を重ねて強調した。
しかし、焦点の「なぜ6人を任命しなかったか」に関しては「人事に関することで答えは差し控える」と繰り返した。
6人はかつて政府方針に反対したり慎重論を唱えたりした経緯がある。任命しないのは、異論を排除し、会議を政府の都合のいいように利用するためではないか。この疑念が問題の核心だ。それに答えない限り、不信は募る一方だ。
森友・加計問題の再調査を改めて否定したのも理解できない。
首相が目指す社会像として所信表明演説で語った「まず自分でやってみる。そして家族、地域で互いに助け合う。その上で政府がセーフティーネットでお守りする」との考え方もテーマとなった。
枝野、泉両氏は、「自助」で切り抜けたいと思っても、そうはできない人が増えている厳しい現実を指摘し、「公助」が最後になっている点を批判した。
まさに深めるべき議論のはずだが、首相はここでも所信表明の言葉をなぞるだけだった。
自民党からは野田聖子幹事長代行が代表質問に立ち、女性の社会進出の遅れなどをただした。
自民党も変化しつつあることを示す人選だった。それでも首相は、例えば長い間の懸案である選択的夫婦別姓の導入について「国会の議論を注視しながら検討する」とかわした。求められているのは自らの考えだ。
建設的な議論を野党に求めた首相だが、まずそれを自戒すべきは首相自身である。
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