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#排除する政治~学術会議問題を考える

「独立性が揺らぐ事態 任命拒否はありえない」 吉川弘之・元学術会議会長

吉川弘之・東京大名誉教授=東京都千代田区で2012年10月16日、山本晋撮影

 日本学術会議が揺れている。会員候補6人の任命拒否問題から国民の目をそらせるように、菅義偉首相は「組織全体の見直しをしなきゃならない」(26日のNHK番組)と述べるなど、組織の抜本的な改革に向けた議論を進めようとしているからだ。本格的な改革が実施されることになれば、2004年の日本学術会議法改正以来となる。当時の改革議論にもかかわり、1997年から6年間、日本学術会議会長を務めた吉川弘之・東京大名誉教授(87)に、「学者の国会」と呼ばれる学術会議の意義と課題を聞いた。【永山悦子/オピニオングループ】

政府と学術会議、かつては信頼関係があった

 ――任命拒否を知ったとき、どう思いましたか。

 ありえないことで、何かの間違いかと思いました。海外でも会員の選考はアカデミーの自由に任されていて、政府や王室がそれを追認する形です。今回は、首相が任命拒否された6人の名前が入っていない名簿しか見ていないとか、事務方と事前に(任命に関する)考え方を共有していたとか、次々と聞いたこともないようなことが出てきて、「これは大変だ」と思いました。日本学術会議は法律で定められているように、「独立に職務を行う」という世界のアカデミーのルールに従っていて、会員選出を会議自身で行うことは重要な要件です。

 ――会長だったとき、だれが会員になるかについて、事前に政府へ説明したり、内容の提示を求められたりしたことはありましたか。

 一切ありません。推薦した会員を政府が拒否する可能性があるということも、一切考えたことはありませんでした。

 ――政府と学術会議の関係はどうでしたか。

 お互いに十分な信頼関係がありました。行政改革の議論が進んでいたころ、ちょうど海外のアカデミーのトップが日本へ集まる機会があり、彼らと一緒に野中広務・官房長官(当時)を訪ねました。海外の会長からはアカデミーの意義についての説明があり、野中さんは真面目に耳を傾け、理解を示していました。

 小泉純一郎政権のときは、02年に南アフリカで開かれた「環境・開発サミット」で日本が「持続可能な開発のための教育の10年(ESD)」を提唱し、学術会議会長だった私は応援演説をしました。その後、ESDは国連総会で採択され、世界各国が取り組むことになりました。このように、学術会議は会員の合意による助言をはじめとして、時には協力的に行動し、自由に話せる雰囲気でした。私が会長だったときの首相は、小泉さんをはじめ森喜朗さんも小渕恵三さんもとても友好的でした。

 それが、バブル崩壊後の経済の低迷が長引き、科学的な根拠に基づく政策や科学的な視点からの長期的な社会課題の解決などよりも、目先の問題に対応するしかなかったことによって混乱しているのかもしれません。しかし、失ってはいけない独立性が揺らぐような今回の事態は非常に深刻だと考えます。

 ――国会には、学術会議が17年に出した軍事研究に関する声明(軍事的安全保障研究に関する声明)を問題視する議員が少なくありません。

 現状を見ると、(任命拒否に)声明が関係あると思われるような状況です。しかし、あの声明は、よく読めば軍事研究を禁止するものではありません。生命科学研究に取り組むときに倫理委員会へ諮問するように、軍事研究にも倫理的な審査を求めたものです。さらに、国内では、軍事研究の倫理的な問題の判断に関する研究を専門とする人がいません。声明では、そのような専門分野の必要性も指摘しており、批判には当たらないのではないでしょうか。よく議論すれば解決できる問題だと思います。

会員の「偏り」排除できている

 ――会員の選び方が身内優遇になっている、との指摘があります。

 日本学術会議が選考に使っている現会員が新会員を推薦する方式「コ・オプテーション」は、海外の約9割のアカデミーが採用しています。この方式は、学術会議側から政府へ提案しました。

 学術会議は、97年に自己改革委員会を設置し、組織の見直しを検討しました。当時は、各学会の推薦をもとに新会員を選んでいましたが、会員が学会代表になってしまい、科学全体の視点に立った議論が欠けていました。そこで、「俯瞰(ふかん)的」な組織を目指すために、現会員が推薦する「コ・オプテーション」が浮上したのです。

 当然、現会員が自分の弟子だけを推薦し、派閥ばかりになる恐れがあったため、この方式の弊害をすべて排除することにしました。「自分の身近な人は推薦しない」「学術的業績が最も優れている人を推薦する」「自分の分野にだけこだわり続ける人は推薦しない」などのルールを作りました。さらに推薦された人を何段階もかけて絞り込み、女性や地方の会員を増やすなど、俯瞰的な組織になるような方向で慎重に選考することにしました。

 さらに、社会的な課題について多くの科学分野が俯瞰的な視野に立って助言を作成するには210人の会員だけでは足りないですから連携会員制度を作ること、縦割りを改善するために7部に分けていた組織を横断的な議論を進めやすい3部に減らすことなども合わせて提案しました。学術会議の組織改革を議論していた総合科学技術会議(当時)にこれらを提案し、それが04年の法改正で認められたのです。

 ――「俯瞰的な活動」は菅首相もこだわっている点ですね。しかし、最初は俯瞰的であっても、コ・オプテーションを繰り返すうちに徐々に内輪のメンバーに偏る心配があります。

 現在のメンバーや活動を見ても、そのような懸念は十分に排除できていると思います。私は改革前の学術会議の報告書にすべて目を通しましたが、9割は「自分の分野の研究所を作れ」など陳情書のようなものでした。改革後は、そのような報告書はなくなりました。会員たちに、他分野の人たちと話し合いながら、政治や社会に役立つ助言をすることをメインに考える姿勢が浸透し、俯瞰的な組織を目指す取り組みとして定着してきたと感じます。

民間であってもよいが、国の代表として「唯一」でなければならない

 ――政府機関である学術会議の法人化や民営化を求める声もあがっています。

 海外のアカデミーの多くは…

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