オンライン授業は「悪」なのか 対面授業5割未満の大学名公表の波紋
- ツイート
- みんなのツイートを見る
- シェア
- ブックマーク
- 保存
- メール
- リンク
- 印刷

後期の対面授業が5割未満の大学名を公表する――。文部科学省が示した方針に大学関係者の間で波紋が広がっている。文科省は「オンライン授業を否定するものではない」と言うが、当の大学側には対面再開への「圧力」と映った。どうも評判の良くない印象のオンライン授業だが、本当に望まれていないのか。【大久保昂/東京社会部】
「学生は危機的な状況」萩生田文科相が調査方針
萩生田光一文科相が大学名公表の方針を明らかにしたのは、10月16日の閣議後記者会見だった。8~9月に文科省が実施した調査で、後期の授業について「3割が対面」「ほとんど遠隔」などと答えた大学、短大、高等専門学校の計376校に対し、遠隔授業の比率が大きいことに学生が納得しているかどうかの認識を尋ね、大学名とともに公表する考えを示した。
その理由を萩生田氏はこう説明した。「入学したのに一度も学校に行けない、友人がいない、そのことによって休学や退学を考えている学生もいる危機的な状況がある。大切なのは学生の皆さんが納得しているかどうかだ」「感染拡大に配慮しながら、ぜひ対面も交ぜた『ハイブリッド』の授業をやっていただきたい」――。ただ「オンライン授業は駄目だと言っているわけではない」とも付言した。
困惑する大学「『対面3割』に意味はあるのか」
だが、大学側には困惑を持って受け止められた。
4日後の10月20日、全国大学高専教職員組合が動く。「調査結果の公表は、各大学に現実を無視した授業実施を強いることになる」として、結果を公表しないよう求める要望書を文科省に提出した。鳥畑与一中央執行委員長(静岡大教授)は記者会見で、「現場はベストのやり方を模索している。オンライン授業が悪いという先入観は良くないのではないか」と語気を強めた。
全国の410校の私立大が加盟する日本私立大学協会の小出秀文事務局長も弱り切った表情をみせる。「対面授業が少ない大学として公表されたら、その大学が良い印象で受け取られることはないでしょうね……」
大学は今年度、オンラインなどの遠隔授業に力を入れてきた。実はそれを後押ししたのも文科省だった…
この記事は有料記事です。
残り2292文字(全文3177文字)