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社説

接戦の大統領選 米国の混迷を映し出した

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 米大統領選が投開票された。勝敗を決する激戦州では夜を徹して集計が進んだが、確定結果が出ない異例の展開である。

 共和党のトランプ大統領は「我々は勝利する。祝う準備はできている」と自信を示し、支持者から歓声を浴びた。

 民主党のバイデン前副大統領は「最後の1票まで数えるべきだ。結果を楽観している」と述べ、長期化への覚悟を促した。

 1億人を超える有権者が期日前に投票した。その多くが郵便投票で、当日分と合わせて集計に手間取る州も出ている。

 国民の高い関心を反映するにはすべての票が集計される必要がある。忍耐が求められるが、民主主義の真価が問われる局面だ。

分断深めたトランプ氏

 これほどの無秩序と分断に覆われた大統領選もまずない。

 新型コロナウイルスの犠牲者は23万人を超え、世界で最多だ。連日数万人が新たに感染している。

 警官による黒人死亡事件を機に差別抗議デモが広がり、投票直前にも同じような事件が起きた。

 走行中のバイデン氏の陣営の車が反対派に取り囲まれ、トランプ氏が住むホワイトハウスの周囲に防犯用のフェンスが張られた。

 投票日は暴動など懸念された事態には至らなかったが、これが民主国家の手本とされてきた米国の現実かと驚かされる。

 分断をあおり、混乱を増幅させた責任はトランプ氏にある。

 感染拡大を軽視して十分な対策を講じなかった。デモに対抗する白人の過激な活動をやめさせようともしなかった。

 とりわけ看過できないのは、選挙日以降も郵便投票を受理する激戦州の知事に対し、「街中で暴力が起きる」と脅したことだ。

 怒りの矛先を、州知事を支持する連邦最高裁にも向けた。これでは自由で公正な選挙を大統領が妨害しているのに等しい。

 郵便投票の集計が終了し、よほどの小差になれば、再集計や法廷闘争になることはあり得る。

 重要なのは、その結果を受け入れることだ。暴力を助長するような言動は決して許されない。

 にもかかわらず、トランプ氏が再び多くの支持を得たのはなぜか。真剣に考える必要がある。

 米国が直面する課題は深刻だ。コロナの犠牲者は冬に急増すると予測されている。戦後最悪となった失業率はなお高い水準にあり、経済は疲弊している。

 トランプ氏への支持が中西部の「ラストベルト」(さび付いた工業地帯)で前回と同じく高かったことは、注目される。

 米メディアの出口調査では、経済問題を最大の課題と考える人の多くがトランプ氏に投票した。生活に困る人々が支持したようだ。

 その多くを占める白人の労働者層はグローバル化に伴う産業空洞化で困窮した人々だ。充満する不満をトランプ氏の「米国第一」のメッセージが吸収したといえる。

 トランプ氏は、米国を衰退させたのは、過去の政権が進めたグローバル化にあると主張する。

反国際主義の流れ強く

 トランプ政権が標的としたのが、多額の貿易赤字を抱える中国だ。製造業を守ると訴えた貿易戦争は労働者の留飲を下げた。

 「反グローバル化」は、米国に根付いた潮流とみるべきだろう。戦後の自由な国際秩序を主導し、それを守ってきたかつての米国に戻ることはあるまい。

 国際社会は、これを前提とした外交政策の立案を迫られる。

 トランプ政権は国際社会の足並みも乱した。保護主義的な通商政策に加え、地球温暖化対策のパリ協定を破棄するなど多国間の枠組みに背を向けた。

 地球規模の課題は、米国抜きでは解決できない。新型コロナのワクチン供給や核軍縮の交渉でも米国の責任は重い。

 米国を動かすには、同盟国や友好国などが積極的に後押しする必要があるだろう。

 バイデン氏のように、多国間主義を重視する声は米国内にも根強い。中国やロシアに対抗するために同盟国の連携を促す意見は党派を超えてある。

 国内外の分断を修復し、秩序を回復するのは容易ではない。それでも、結束する努力なしにこの難局を乗り切ることはできない。

 党派の利益だけでなく、すべての国民と米国のために最善を尽くすのが、国家のリーダーであることを忘れてはならない。

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