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春の海 山口県美祢市・後藤安正(農業・94歳)

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 昭和18(1943)年の暮れ、下関の軍需工場へ徴用された。騒々しい寮生活になじめずに閉口しているとき、寮生に赤痢患者が出て、工場側から希望すれば外泊を認めるという。上司に相談すると紹介されたのが電車で1時間、町外れの一軒家で後ろは雑木林だ。空いているからどうぞと、家主さんはおおらかだ。

 部屋は母屋の2階で、床の間付きの6畳。少し離れた部屋には先住の婦人がおられ、裁判所に勤めているという。

 夜勤明けの日曜だった。うたた寝をしていると忍びやかな琴の音がする。思わずせきをしてしまった。「ごめんなさい」と言ってMさんは、琴が好きで稽古(けいこ)中だが、街の中では非常時でとても琴など弾けないので、静かなこの家に落ち着いて「春の海」が弾けるようになったとか。

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