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「モテないけど生きてます」出版 “非モテ”から男性の生きづらさ描く

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ぼくらの非モテ研究会編著「モテないけど生きてます」(青弓社)
ぼくらの非モテ研究会編著「モテないけど生きてます」(青弓社)

 「モテないけど生きてます」。そんなタイトルの本が青弓社から刊行された。「非モテ」という言葉を入り口に、生きる苦悩を語り合う男性たちの当事者グループ「ぼくらの非モテ研究会」(非モテ研)による約3年間の活動報告書。社会が求める「あるべき男性像」を問い直しつつ、「モテない」悩みに絡み合う多様な生きづらさを時にユーモアを交えて描く。

 タイトルだけ読めば、おおげさに思うかもしれない。だが本書につづられる一人一人の悩みは切実で、ほろ苦く、痛みを伴う。「一人前の男ではない」という劣等感や焦燥感、疎外の経験。それらが複雑に折り重なり、さらには女性への執着が引き起こす挫折によって自己否定を深め、ますます孤独にさいなまれる。「男は自らの苦悩を声高に語るものではない」という社会規範を背景に、「ともすれば埋もれてしまう男性の苦しさを、女性に依存せずに自分たちで考えていく実践の記録として提示したいという思いがありました」。非モテ研を主宰する西井開(かい)さん(31)は執筆理由を語る。

 非モテ研のメンバーは流動的で、関西を拠点に月1~2回集まる。「家族」「身体」「からかい・いじり」など毎回異なるテーマで自分の体験を言葉にする。男性学でも指摘されてきた「男性の語りづらさ」に対し、個人が主体的に語ることで悩みに向き合おうとするゆるやかなコミュニティーだ。「非モテ」は1990年代後半にインターネット上で生まれた自虐的な言葉だが、研究会ではあえて定義しない。そのことで、いじめやパワハラといった被害体験、公には言えない欲望や性暴力などの加害体験も語られ、<名状しがたい男性たちの生きづらさを語りだすための呼び水になった>とつづる。

「個人研究」と「共同研究」

 本書がユニークなのは、一つの結論を急ぐのではなく、個別バラバラの語りにある。例えば継続的に参加するメンバー8人による「個人研究」と2人の「共同研究」。肥大化する妄想との付き合い方や「人を頑張ってバカにしてしまう病」の考察など、個々の体験が言語化され、クスリと笑えるものもある。非モテ研が大事にする「個別の語り」は、「モテる/モテない」といった「男らしさ」の社会規範から距離をとり、「自分の言葉を体得していく過程」だと執筆者の一人、明日葉さん(20代前半)は言う。自身の生きづらさを「不本意出家」という言葉で分析し…

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