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社説

バイデン氏が勝利宣言 内外の分断修復に全力を

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 米大統領選で民主党のバイデン前副大統領が勝利宣言した。共和党のトランプ大統領との大激戦を制した。

 米国の分断を深め、世界に混乱を広げた「トランプ政治」が退けられた。トランプ陣営は法廷闘争を繰り広げているが、根拠には疑義が生じている。平和的な権力の継承に向けて前進するときだ。

 バイデン氏は勝利演説で「分断ではなく結束を目指す」と述べ、党派を超えた融和を図り、国際社会での信頼を回復すると訴えた。

 その実現を願いたいが、前途は多難だ。米国に安寧が戻り、国際秩序が安定に向かうと考えるのは早計だろう。

「二つの米国」が顕在化

 選挙戦で浮かび上がったのは、対立する「二つのアメリカ」だ。

 警官の暴行で黒人が死亡する事件が相次いだ。差別抗議デモが全米に広がり、極右の白人がデモを襲撃する事態に発展した。

 人種への帰属意識が強まり、白人と非白人の反目が極まった。トランプ氏は混乱をあおり、バイデン氏は暴力を非難した。

 路上のリアル(現実)の衝突とは別に、ソーシャルメディアを通じてバーチャル(仮想)の世界を舞台とする新たな対立も起きた。

 党派性をむきだしにした中傷の応酬が続き、陰謀論がまかり通る「デジタル戦場」だ。トランプ氏は迎合し、バイデン氏は戒めた。

 「親トランプ」か「反トランプ」かが党派を分かつ対抗軸になった選挙戦の激烈さは、驚くべき数字に表れている。

 得票数はともに7000万票を超え、オバマ前大統領の過去最高をそろって更新した。両極化した「二つのアメリカ」の膨張である。

 そんな引き裂かれた市民社会の再建に、バイデン氏は取り組まなければならない。

 人種差別問題は奴隷制時代から続く米国の宿弊だ。解消するのは容易ではないが、対立の激化を抑えることはできるはずだ。

 背景には、かつて圧倒的多数派だった白人の焦燥感がある。投票総数に占める割合は40年前の約9割から6割台にまで低下した。

 差別の根絶には、非白人の貧困対策や教育拡充が欠かせない。それだけでなく相互不信を緩和する政治が必要になる。

 新型コロナウイルス対策では、トランプ氏が経済活動再開を重視し「ウイルスは大したことない」とうそぶいた。1日約10万人が感染する深刻な事態は、科学を無視した態度と無縁ではないだろう。

 バイデン氏はそのつけを背負うことになる。科学的知見を結集し、国民の健康と命を守る対策を講じる責任がある。

 新型コロナは米国経済に大きな打撃を与えた。バイデン氏は産業の活性化と雇用対策に大規模な予算を投じるという。格差をこれ以上広げないことが重要だ。

多様性と復元力に期待

 トランプ政権は国際社会での米国の威信も傷つけた。地球温暖化対策のパリ協定やコロナ対策を担う世界保健機関(WHO)からの離脱は、一例に過ぎない。

 バイデン氏は米国が世界を照らし導く「灯台」になると語った。国際協調の立て直しの手始めとして、就任初日にパリ協定に復帰するという公約を果たしてほしい。

 米中対立は、新政権が直面する最大の外交課題になるだろう。緊張を管理し、「新冷戦」を避ける知恵が必要だ。

 同盟国も敵とみなすトランプ氏には、とくに欧州諸国が不信を募らせた。同盟網を再構築し、民主国家の糾合を提唱するバイデン氏の政策を日本も後押しすべきだ。

 だが、国際的な課題にどこまで関与するかは、議論がある。同時多発テロから続く対テロ戦争は来年で20年だ。国内には介入主義への懐疑論が高まっている。

 国際協調を重視しつつ、米国の役割を減らしていく。外交政策は、副大統領だったオバマ政権時代の路線に回帰するとみられる。

 米国の力の源泉は、多様性と復元力にある。多人種や異文化の融合が活力を生み出し、国家が危機にひんしても復活してきた。そのソフトパワーとダイナミズムが米国を世界の超大国に押し上げた。

 女性、黒人、アジア系の顔を併せ持つ副大統領候補のカマラ・ハリス氏は「ここは可能性の国だ」と述べ、国民を勇気付けた。

 深まる社会の分断を修復し、漂流する世界をまとめる。難しい課題だが、それができなければ米国の影響力は弱まるばかりだろう。

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