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平松 洋子・評『自転しながら公転する』山本文緒・著

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ゆっくり答えに向かう女性たちの等身大の姿を描く

◆『自転しながら公転する』山本文緒・著(新潮社/税別1800円)

「来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから」

 尾崎紅葉の小説『金色夜叉』、貧乏学生の貫一が、富豪との結婚を選んだ許嫁(いいなずけ)のお宮に投げつけた言葉。名科白(せりふ)を思い出したのは、長編小説『自転しながら公転する』の主人公が「貫一・おみや」だったから。結婚、仕事、親の介護……ふたりの恋愛は終始波乱ぶくみ。現代の「貫一・おみや」もやっぱり幸せになれないんだろうか。

 直木賞作家・山本文緒じつに七年ぶりの作品は、五百ページ近い長さを一気に読ませるおもしろさ。登場人物の胸中を描く言葉のやりとりにしても、巧緻な会話劇さながら。カンテラの灯をかざすかのように、それぞれの心の襞(ひだ)の奥を細やかに照らしだす。

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