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社説

トランプ後の世界経済 保護主義との決別が急務

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 米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン氏の重要課題は新型コロナウイルスの影響で危機に陥った経済を立て直すことだ。

 「米国第一」を振りかざすトランプ大統領は制裁関税を相次いで発動し、世界経済を分断した。

 中国に巨額の関税を課し、世界1位と2位の経済大国が貿易戦争を繰り広げる異常事態を招いた。先端技術の覇権争いでは中国製品締め出しを各国に迫った。

 同盟関係にある日欧すら制裁の対象とした。日本などが参加してアジア太平洋地域に自由貿易圏をつくる環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からも離脱した。

 保護主義の影響が本格化した昨年、世界の成長率はリーマン・ショック以来の低水準だった。そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。

コロナ禍克服で協調を

 米欧の今年7~9月期の国内総生産(GDP)は、4~6月期の歴史的な落ち込みからは回復したが、コロナ前の水準には遠い。感染が再拡大し、景気が再び停滞するとの予測が広がっている。

 バイデン氏は、不毛な混乱を招いた保護主義と決別し、コロナ危機脱却に欠かせない国際協調体制の再構築を急ぐ必要がある。

 世界が分断されていては、コロナ不況の克服はおぼつかない。国境を越えた人の往来が制限されていることに加え、貿易の停滞も続けば経済回復は見込めない。

 自由貿易は各国の結びつきを強めて、経済のグローバル化を促し、成長の基盤となってきた。

 協調の要となるのは米国である。リーマン・ショック後には、中国なども加えた主要20カ国・地域(G20)首脳会議の創設を提唱し、危機克服策を取りまとめた。コロナ不況はもっと深刻だ。連携の重要性は増している。

 バイデン氏は協調を重視し、制裁関税に否定的な考えを示してきた。経済再生のためにも制裁関税は早期に撤廃すべきだ。

 気がかりなのは、民主党に保護主義を主張する声が根強く、対中強硬論が大勢を占めることだ。

 安い海外製品の流入に伴う倒産や失業の増加を心配する人たちは多い。バイデン氏も米国内の不安に配慮して、米国企業を優遇する政策を打ち出している。トランプ氏の路線を大きく変えないのではないか、との見方もある。

 だが、保護主義が米国のためにならなかったのは明らかだ。

 トランプ氏は「ラストベルト(さびついた工業地帯)」を復活させると強調したが、ラストベルトの大半で昨年、製造業の雇用が減った。制裁関税で中国などから輸入する原材料が値上がりし、企業の業績を圧迫した。グローバル化の負の側面は、雇用確保など国内対策で解決すべきだ。

 TPPへの復帰も検討してほしい。アジア太平洋地域の新興国に輸出を増やし、米国の景気回復を後押しする効果が見込める。

 バイデン氏はTPPを推進したオバマ政権で副大統領を務めたが、民主党に反対論が多く、本人も慎重な姿勢を示している。日本政府は復帰を働きかけるべきだ。

安定化は超大国の責任

 自由貿易を支えてきた世界貿易機関(WTO)の再建も課題だ。

 WTOは関税などで世界共通のルールを定め、貿易紛争の処理にあたっている。各国が勝手に判断すれば経済が大混乱するからだ。

 ルールに反する制裁関税を連発したうえ、紛争を処理する委員の人選も阻むなどWTOを機能不全に追い込んだのがトランプ氏だ。多国間の枠組みを機能させることが協調を取り戻す契機となる。

 トランプ氏は反グローバル化の流れを加速し、第二次世界大戦後の国際秩序を揺るがした。だが、各国が自国優先に走った結果がどうなったかは歴史が示している。

 戦前の世界恐慌では米国も保護主義を打ち出した。各国の対立が激しくなり、大戦を招いた。ルーズベルト政権で国務長官を務めたコーデル・ハル氏は回顧録で「我々が世界に対する義務に背いた最も著しいものは経済的孤立主義であった」とつづっている。

 教訓を踏まえて、米国は戦後秩序の構築で中心的な役割を担ってきた。世界経済を安定させるのは超大国の責任である。

 バイデン氏は勝利演説で「世界中が米国を見ている。米国は模範となる力で世界を導く」と宣言した。グローバル化のひずみを修正し、果実が広く行き渡るよう協調を主導する。国際社会の新たなリーダーが果たすべき役割だ。

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