スプリンクラー、分かれる意見 文化財どう守る? 首里城火災1年

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火災による損傷が修復され、プレハブの外から見学できるようになっている首里城正殿基壇の遺構=那覇市で2020年10月30日午後4時37分、徳野仁子撮影
火災による損傷が修復され、プレハブの外から見学できるようになっている首里城正殿基壇の遺構=那覇市で2020年10月30日午後4時37分、徳野仁子撮影

 那覇市の首里城で正殿などが焼失した火災から1年がたった。火災では出火の発見が遅れ、初期消火もできず、8棟が焼損した。所有する国は2026年に再建する予定の正殿に自動消火ができるスプリンクラーなど高度な防火設備を設置する方針で検討を進める。一方、文化庁は首里城の火災を教訓に、全国各地の文化財建造物などでも防火対策を強化するよう呼び掛けるが、課題も多い。【遠藤孝康、平川昌範】

焦点は人手が手薄になる夜の態勢の構築

 火災から1年がたった10月31日、首里城では恒例の「首里城祭」が始まり、多くの人が足を運んだ。6月に入場が再開された有料の中心部エリアは焼け跡が片付けられ、世界遺産の地下遺構や正殿の屋根にあった獅子瓦などを見学できるプレハブが建つ。火災後に国内外から約50億円の寄付が集まったことを考慮し、国は「見せる再建」を掲げて復元の過程をできるだけ公開する方針だ。

 首里城の火災は19年10月31日午前2時半ごろに正殿内で発生。原因は電気系統のトラブルとみられたが、沖縄県警の捜査では特定できなかった。正殿内には熱感知式の火災報知機があったが、発報が遅く、近くの奉神門に警備員と監視員計3人がいたものの初期消火ができなかった。スプリンクラーなどの自動消火設備もなく、一気に延焼。到着した消防隊も正殿に至る城門をこじ開けたり、ホースを延ばしたりするのに時間がかかり、放水開始が遅れた。

 国が設置した有識者による「首里城復元に向けた技術検討委員会」では教訓を基に、正殿再建時の防火対策を検討している。19年度の議論を踏まえ、政府が3月に決定した工程表には、火災の早期発見のための最先端の自動火災報知設備▽迅速な初期消火のためのスプリンクラーなどの設備▽消火用の水を城郭内に送る連結送水管――などの導入が書き込まれた。

 スプリンクラーは誤作動による水損事故が起こらないよう、熱と煙の双方の感知で作動するタイプの導入を検討する。連結送水管は高層建築物などに設置されるもので、城壁で囲まれた首里城中心部でも迅速に放水ができる。屋内消火栓を一人でも操作できるタイプに変更することや、隣接する建物への延焼を防ぐ防火シャッターの導入なども検討。内閣府沖縄総合事務局は「歴史的空間が損なわれないよう意匠に配慮しながら、…

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