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「公助」の前にボロボロになる 困窮者支援の現場が抱える菅首相への違和感

奥田知志・NPO法人「抱樸」理事長=東京都新宿区で2019年12月2日、根岸基弘撮影

 <自分でできることは、まず自分でやってみる。そして家族、地域で互いに助け合う。その上で、政府がセーフティーネットでお守りする>。菅義偉首相の「自助」論を聞いて、何だかモヤモヤした。「自分でなんとかしろ」と言われた気がしたから。北九州市で約30年間、路上生活者を支援しているNPO法人「抱樸(ほうぼく)」理事長で牧師の奥田知志さん(57)に疑問をぶつけてみた。このままじゃこの国、ますます「助けて」と声を上げづらい社会になってしまいませんか?【オピニオングループ/小国綾子】

「助ける」に序列をつけるな

 ――菅首相の口から「自助・共助・公助」という言葉を聞いて、国に突き放された気がしました。

 ◆菅首相の最大の過ちは、「助ける」ということに序列と順番を持ち込んだ点です。菅首相の言っているのは「自助」→「共助」→「公助」の順です。

 言わば「ダム決壊論」。「まずは自分でなんとかしてください、それで『自助』のダムが決壊したら、次は『共助』のダム、すなわち周囲で支えます。『共助』のダムも決壊したならば、最後は『公助』(国)のダムが助けましょう」と。

 一見筋は通っているように見えますが、困窮者支援の現場から見れば机上の空論です。

 ――どういうことですか。

 ◆「公助」に支えてもらう前に、「自分」も「周り」もボロボロに傷ついてしまうからです。例えば、お金に困っている人がいたとする。今の時代、地域住民でお金を貸そう、とはなりません。しかし公的な支援制度がしっかりしていれば、周囲の人々が「あの制度を使うといいよ」と「公助」につなげることができる。「公助」がしっかりしていれば、周囲も関わりやすいから、困っている人を一人にさせないで済むのです。

 逆に、まずは自分でなんとかしろ、ダメなら家族や地域で支えろ……と「公助」を後回しにすると、困っている人や地域が崩壊してしまい、二度と立ち上がれないほど傷ついてしまう。結局、「公助」で助ける時には、時間もお金もよけいにかかる。

 「自助」は大事です。しかし、「公助」を出し惜しみするほど、「自助」の成り立たない社会となってしまいます。

 ――だから「公助」が最初から必要なんですね。

 ◆ええ。家も仕事も失った人を救うより、そうなる前に支えることが肝心です。風邪ならちょっとした薬や休養だけで済みますが、それを放置し重篤な病気になったら集中治療室(ICU)での治療が必要になるようなものです。

 「自助・共助・公助」に序列があってはいけない。三つが同時に機能すべきです。「自助」を成立させるためには、「公助」や「共助」がまず必要で…

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