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毎日新聞

優勝を決め、東京オリンピックに望みをつないだ大原洋人=千葉県一宮町で2020年11月3日ⒸJAPAN OPEN OF SURFING

Field of View

自由な観戦文化を封印 無観客開催のサーフィン・ジャパンオープン

 海岸から聞こえてくるのは得点を知らせるアナウンスと押し寄せる波の音だけだった。東京オリンピック競技会場となる千葉県一宮町の釣ケ崎海岸で開かれたサーフィンのジャパンオープン(10月31日~11月3日)。五輪最終予選の出場選手を決める大会は、新型コロナウイルス感染防止のため無観客で実施された。

 「観客がいる方が選手はパワーをもらえる。(プロ)野球は観客が入っているので大丈夫だと思ってしまう」。男子で準優勝した稲葉玲王はそう話し、首をかしげた。海岸には競技スタッフや一部メディア、選手につき1人の帯同者だけ。好演技に拍手が湧くこともなかった。記者はインターネットテレビ「Abema(アベマ)TV」の配信を見て、オンラインで選手に話を聞いた。

無観客で実施されたサーフィンのジャパンオープン会場の釣ケ崎海岸=千葉県一宮町でⒸJAPAN OPEN OF SURFING

 サーフィンは他競技とは異なる観戦文化がある。入場券は必要なく、波に合わせて海を移動する選手の動きとともに、自由に海岸を歩き回りながら観戦できるのが魅力の一つだ。ところが今回は、普段開放されている海岸への一般人の立ち入りを禁止し、大会を無観客で開催した。

 日本サーフィン連盟は来年5月の五輪最終予選の日本代表選手を決める必要があり、本格的な冬を迎える前の大会開催を判断した。一宮町民からは感染症の収束が見通せない中、「なぜ、この時期なのか」と懸念の声が上がった。連盟は町と協議し、無観客開催を決めたのだ。

 地元の思いを尊重しただけではない。感染が拡大した春先に多くのサーファーが各地の海に集まる姿に批判が出て、連盟が自粛を呼びかけた経緯もあった。関係者は「自らの襟を正さないといけないという思いもあった」と話す。無観客の競技会はサーフィンだけではない。ほかの競技団体幹部は「観客によるクラスター(感染者集団)が発生すれば、五輪開催の足を引っ張ってしまいかねない」と本音を明かす。

 大会は見応え十分だった。男子は一宮出身の大原洋人が終盤の逆転劇で制し、女子はハワイ出身の前田マヒナが本場仕込みの力強いターンで初戦からトップ通過の完全優勝で、五輪に望みをつないだ。国内でこれまでレジャーとしての見方が強かったサーフィン。五輪を前にスポーツとして普及するチャンスは、コロナ下で訪れるのか。海岸沿いで自由に観戦できるサーフ文化の封印に、秋の海はさびしさが漂っていた。【村上正】

村上正

毎日新聞東京本社運動部。1984年、神戸市生まれ。2007年入社。舞鶴支局、神戸支局を経て、大阪本社社会部では大阪府警を担当。17年4月から現職。競技は水泳やサーフィンを担当。東京パラリンピックでは取材班キャップ。16年リオデジャネイロ五輪を取材した感動から、長女に「リオ」と命名した。