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普賢岳噴火伝える火、消えたまま 「灯し続ける」島原市碑文消去 17日で30年

火が消えたままのモニュメント「平成新山の火」。碑の説明文も消されている=長崎県島原市で2020年11月15日午前11時16分、今野悠貴撮影

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 長崎県の雲仙・普賢岳が198年ぶりに噴火して17日で30年となった。島原半島には当時の噴火災害の教訓を伝える碑が残されているが、一部は壊れたり忘れられたりして防災に生かされていないのが実情だ。自然災害を伝える碑は全国各地にあるが、適切に管理されていないケースも多い。専門家は「災害の風化を防ぐためにも碑を大切にし、地域の防災意識を高めるべきだ」と指摘する。

 普賢岳は1990年11月17日に噴火。翌91年6月3日に大火砕流が発生し、消防団員ら43人の死者・行方不明者が出た。その前後にも土石流や火砕流が頻発し、建物被害は2511棟、被害総額は2299億円に及んだ。11月17日の噴火は、96年6月3日に終息宣言が出されるまでの5年半に及ぶ長期災害の引き金になった。

雲仙・普賢岳

 普賢岳の東側に位置し、大きな被害を受けた同県島原市は97年8月、噴火災害を後世に伝えようと、市中心部にモニュメント「平成新山の火」を設置した。普賢岳の溶岩ドームから採火し、復興のシンボルとしてランプに火をともし続けてきたが2018年10月、台風24号の通過後に火が消えていることが判明。市役所旧庁舎で保管していた種火は17年に始まった市庁舎建て替え工事に伴い消されており、再びともすことはできなかった。

 碑には「未来を照らす炬火(きょか)として ここに灯(とも)し続ける」などと刻まれていたが、火が消えたため市は碑文を消去。現在は火の消えたランプを囲む溶岩塊だけが残っており、何の碑なのか分からない状態になっている。

他の碑も乏しい認識

 市内には、大火砕流で犠牲になった消防団員を追悼するため雲仙岳災害記念館の隣接地に設置した殉職者慰霊碑など、他にも噴火災害を伝える碑があるが、日常的に訪れる人はいない。報道関係者らが犠牲となった「定点」付近にあるモニュメントも広く認識されているとは言えない。

「島原大変」の犠牲者の慰霊碑前で「かつての惨事を忘れてはいけない」と語る隈部政博さん=長崎県島原市で2020年11月12日午前10時27分、今野悠貴撮影

 一方で200年以上前の噴火災害を伝える碑を大切に守り続けている人たちもいる。島原半島では江戸時代の1792年、普賢岳の隣の眉山(まゆやま)が地震で崩れ、膨大な土砂が有明海に流れ込み大津波が発生。「島原大変」と呼ばれ、死者は島原半島と肥後・天草地方合わせて約1万5000人に及んだ。

 「平成新山の火」から約500メートル離れた島原市中堀町には、「島原大変」の津波などで犠牲になった105人の名前を刻んだ慰霊碑があり、町内会が大切に保管している。1981年からは毎年、供養祭を開き、普賢岳災害の犠牲者の冥福も祈ってきた。中堀町の町内会長、隈部政博さん(78)は「大昔のことだが、ここまで津波が来たことを伝える大切な碑だ」と話す。

 18年の西日本豪雨で15人が犠牲になった広島県坂町(さかちょう)の小屋浦地区には、1907年に44人が亡くなった豪雨災害を伝承する石碑があったが、漢文で書かれていたため住民に十分に周知されていなかった。国土地理院は近年相次ぐ自然災害を受け、19年に災害の記録や教訓を刻んだ石碑、供養塔などを「自然災害伝承碑」として指定する制度を作り、新たに地図記号も制定した。その土地にどんな災害リスクがあるのか知り、防災意識を高めてもらうのが狙いで、島原市の11基を含む全国205市区町村の計646基が登録されている。

「記憶をつなぐため、適切管理を」

 ただ、伝承碑の現地調査を続ける香川大の松尾裕治客員教授(災害伝承)によると、担当部署の連携不足から制度が共有されない自治体も多く、全国には登録されていない碑が他にも数千はある。松尾客員教授は「災害の記憶をつなぐために碑は重要。行政は積極的に碑を掘り起こし、適切に管理すべきだ。学校で地図記号を教える際に地元の自然災害伝承碑に触れるなどすれば、ハザードマップを真剣に見るようになるはずだ」と話している。【今野悠貴】

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