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生きづらさは継続中 「さびしすぎてレズ風俗に」の漫画家、永田カビさん

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エッセー漫画「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」の一場面から、永田カビさんが自身を描いたイラストⒸ永田カビ/イースト・プレス
エッセー漫画「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」の一場面から、永田カビさんが自身を描いたイラストⒸ永田カビ/イースト・プレス

 エッセー風に自らの日常を描いた「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」で注目された漫画家、永田カビさん(33)は発達障害やうつ病を公表し、心の内面や生きる葛藤を描いた作品で多くの人たちの心をつかんだ。売れっ子作家となった後も「生きづらさ」は継続し、自殺未遂も経験したという。息苦しいコロナ禍の時代、同じように苦しむ“同志”たちに、言葉の処方箋を編んでもらった。【生野由佳/統合デジタル取材センター】

大学中退で「私が所属するところ」を失い、居場所がなくなった

 ――初めて「生きづらさ」を感じたきっかけは何でしたか。

 ◆高校を卒業し、なんとなく美術系の大学に進学しましたが、目的を持てずに半年で中退しました。気づくと、うつ病と摂食障害を発症していました。子供のころから、当たり前にあった「所属する何か。毎日通うところ」を失い、自分の形を支えていた何かが消えてしまったように感じました。

 アルバイトを始めましたが、心身共につらくなり、遅刻や早退、欠席を繰り返して、クビになりました。バイト先に学校のような「私を認めてくれる居場所」を求めていたのかもしれませんね。

 両親と一緒に住んでいました。ですが、そこにも居場所はありませんでした。定職に就き、安定した収入を得るという親が期待する大人に育っていないという負い目がありました。一方で、ありのままの私を受け入れてほしい、やりたいことで認められたいという葛藤もありました。

作品が注目されても、その後に自殺未遂を経験

 ――その後、漫画家としてデビューし、2016年に出版した「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」がヒットしました。

 ◆漫画が社会に認知されても、親は手放しで喜んでくれるわけではなく、むしろその反対でした。「さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ」は色っぽい内容ではありませんが、娘がレズビアン風俗に行ったというタイトルで親を泣かせ、肩身の狭い思いをさせてしまいました。

 18年初めごろでしょうか。心のよりどころになっていた漫画の次のテーマが決まらなかったというのもありますが、死を意識しました。コレという一つの理由ではありません。目が覚めたんです。「死ねなかったんだ」とぼうぜんとしました。体調は悪くて、3日ほど、ベッドに寝たままでした。

 もう1度は、18年10月にお酒の飲み過ぎで「アルコール性急性膵炎(すいえん)」と診断され入院し、退院した後です。医師から禁酒を言い渡され、つらいときに気持ちを紛らわせていたお酒が飲めなくなりました。そして「もう親を悲しませたくない」とエッセーではなくフィクション漫画を描こうと決心していました。だけども全然、仕事は進みません。希望していない仕事、フィクション作品だから心の踏ん張りも利かない。そのころの日記は涙でぶよぶよになっています。

 ――永田さん今、生きています。どのようにして生きる道を選んだのでしょうか。

 ◆1度目は、「自殺する気力も失った」という表現が一番近いと思います。その後、ただ時間が経過していきました。

 2度目は、真っ暗闇の中で、1年以上前にもらったメールの言葉を光のように思い出したのです。

 <死なないことは、難しいことだと、百も承知です。でもどうか、明日が続く先には、思いがけない希望が転がっているかも知れないことを思って、死なないでほしいと思いました>

 このメールをくれたのは漫画家の卯月妙子さんで、…

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