海自の新型護衛艦 防衛費過去最高でもコンパクト化せざるを得ない理由

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進水式が行われた新型護衛艦「くまの」=岡山県玉野市で2020年11月19日午後1時6分、本社ヘリから加古信志撮影
進水式が行われた新型護衛艦「くまの」=岡山県玉野市で2020年11月19日午後1時6分、本社ヘリから加古信志撮影

 海上自衛隊が導入する新型護衛艦の初めての進水式が19日、岡山県玉野市であった。新型艦は従来の護衛艦よりもコンパクトで建造費や乗組員を減らすことができ、護衛艦数の増加や人手不足の解消につなげる狙いがある。防衛省は将来的に自衛艦隊の主力とする方針で、大型化が進んできた護衛艦はコンパクト化へとかじを切るが、新型艦が向かう大海原は穏やかではなさそうだ。【松浦吉剛】

28年度ごろには新型艦が4割に

 新型艦の略称はFFMで、大きさは全長133メートル、幅16.3メートル。基準排水量は3900トンで、現在就役している護衛艦48隻の平均(約5540トン)の7割ほどだ。乗組員は約90人で通常の護衛艦の半分、イージス艦の3分の1程度と少ない。今回進水式を迎えた新型艦は三井E&S造船の製造で、「くまの」と命名された。就役は2022年3月の予定。

 海上自衛隊が護衛艦をコンパクト化する狙いの一つが、護衛艦数の増強だ。28年度ごろには54隻に増やす方針を掲げる。このうち4割(22隻)が新型艦になる予定だ。

 背景には任務の広がりがある。加速する中国の海洋進出への対応に加え、ソマリア沖での海賊対処、多国間訓練の増加、イージス艦による弾道ミサイル防衛と多岐にわたり、護衛艦が不足しているという。

「大型ばかり造れない」

 一方、護衛艦の建造費は19年2月に就役したもので743億円かかっている。しかも、最近は艦船の大型化が進んだ。19年度末の合計基準排水量は26万6000トン(48隻)で、00年度末の19万3000トン(54隻)に比べて1隻当たり1.5倍増えた計算だ。老朽艦の更新に伴い、装備を増強したことなどが理由という。防衛予算(20年度当初で5兆3133億円)は6年連続で過去最高を更新しているとはいえ、防衛省幹部は「大型ばかり造れない。退役する艦船が今後増えていくなか、いかに数を増やすのか。財政との兼ね合いが第一の課題」と明かす。その結果、コンパクト化という方向性が固まった。

 1隻当たりの平均量産価格は506億円(20年9月末時点)で、近年就役した護衛艦より約3割低く、20年3月に就役したイージス艦(約1700億円)の約3割に収まる。サイズ、コストの両面で護衛艦の大型化は転換期を迎えている。

人員不足に対応 クルー制導入へ

 建造期間も従来の5年から4年と短くなり、艦船数を増やしやすくなった。だが、20年時点で67隻の艦船を保有する中国海軍も右肩上がりで数を増やしており、中国側の数的優位は続きそうだ。

 防衛省幹部が「第二の課題」とする人員不足も、新型艦の導入で解消したい考えだ。機雷を掃海する水中無人機を活用するなどし、乗組員を約90人と従来の半分に抑える。複数のグループが交代で乗艦する「クルー制」も取り入れ、乗組員の陸上での休養日を増やすとともに艦船の稼働率を上げる算段だ。海自トップの山村浩・海上幕僚長は「新しいコンセプトで造り上げた船。従来の護衛艦でできることをある程度我慢し、マンパワーを抑えている」と語るが、海自内には「大幅に人を減らし、本当に問題なく運用できるのか」と戸惑いもある。

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